■日時:2018年9月9日 カテゴリ:水素燃料電池
 
空気熱を利用した家庭用ヒートポンプシステムは日本ではエコキュートでお馴染みですが、中国ではどうでしょうか?結論から言うと、現在中国における家庭用空気熱ヒートポンプシステム市場は拡大をし続けており、2017年の市場規模成長率は61となっています。ヒートポンプシステムにはエコキュートと同じ給水器タイプと、給水と暖房を両方行える暖房タイプがあります。この暖房タイプですが、市場規模増加率は2016年で535.7%2017年は209.8%と急激に成長しており、今後数年で1000億元市場に達すると言われています。一方で、ヒートポンプ式給水器市場の成長はやや停滞傾向です
 
なぜ家庭用のヒートポンプの需要が増えているのかと言うと、きっかけになったのは中国の過度な石炭発電への依存がもたらした深刻な大気汚染だと考えられます。中央政府は大気汚染への対策として、2014年より近年コミュニティに暖房を供給する石炭発電ボイラー設備の天然ガスボイラーへの切り替えを進めています(中国では”煤改気”と呼ばれています)。これを急速に進めた結果、特に暖房供給用のボイラー設備の多い華北部では深刻な天然ガス不足を招く自体が発生しています。政府はこの問題を打開すべく、空気熱ヒートポンプ式の暖房設備の導入推奨(中国では“煤改電”と呼ばれています)しており、主に北京を中心として各団地や各軒(中国は一戸建ては少なく、ほぼ集合団地です)に徐々に普及しています。
もともと空気熱ヒートポンプ暖房はエネルギー変換率とコスト面で天然ガスボイラーよりも優れているため経済性の面からも合理的であり、この結果近年の急速な普及に繋がったと考えられます。
 
因みに中国で空気熱ヒートポンプに冷媒として採用されているのは未だに国際規制対象であるR22(フロン類)で、そのシェアは75%となっています。
 
図、グラフ出所:各種報道より
 
中国にもエコキュートのようなCO2を冷媒として使用したタイプもあるにはあるのですが(図はHaier製 天沐King)、価格が非常に高いことから殆ど普及していません。また、現在中国には家庭用空気熱ヒートポンプやコジェネシステムに対して一部の省都市を除き設備導入の際の補助金はありません。
 
  • 中国の空気熱ヒートポンプ給水器の平均COP値は3.6程度
  •  2014年にHaierが中国初のCO2を冷媒とする空気熱ヒートポンプ給水器天沐CUTEを販売開始した。COP値は5.2。最新モデルは天沐KING価格は47000元(76万円)
  • 高額なコストのため、現在CO2を冷媒とする空気熱ヒートポンプ給水器は一部の富裕層向けに販売されているのみで、殆ど普及していない
 
出所:Haier公式ウェブサイトより
 
下の図は給湯と暖房が両方可能な家庭用空気熱ヒートポンプシステム。価格は家一軒用のサイズで約2万元(日本円で約32万円ほど)。価格、機能の面からも優位性があるため、近年はこのタイプが徐々にシェアを伸ばしている。
 
出所:Suning(蘇寧より)
 
最後に、燃料電池コジェネシステムの動向について少し説明すると、現在PEMFC型もエネファームと同じSOFC型の家庭用燃料電池コジェネシステムも中国では普及していません。PEMFC型は一部試作品が販売されていますが、燃料に天然ガスは使えず水素のみ可能であること、コジェネシステムで発電した電力は電力会社の厳しい制限によりグリッド接続できない(余剰電力を販売できない)、ことが大きな障害となっています。2017年に中国科学院の某研究室が5kW商業用のSOFC型コジェネシステムの試作モデルを開発していますが、販売にはまだ時間が掛かりそうです。こちらはエネフォームと同様天然ガスを燃料として使えますが、エネルギー効率は74.6%と日本のエネファームに比べて(エネファームは90%以上)性能にかなり差があるようです。
 
まとめると、中国の家庭用の熱供給システムはしばらくは石炭ボイラーから天然ガスボイラーへの切り替え、空気熱利用のヒートポンプ暖房の普及が大きな動きとなると考えられます。これには、「CO2を排出しないことよりも、まずはCO2排出を削減することから始めよう」という政府の意図があると個人的には考えています。
 
 
筆:INTEGRAL Co.,Ltd. 中西 2018年9月9日