■日時:2018年9月20日 カテゴリ:水素燃料電池、風力発電
中国水素・燃料電池、風力発電所(水素製造含む):北京近郊〜張家口〜張北〜沽源
 
【中国水素燃料電池産業パーク・風力発電所視察報告】
 
  1. 初めに
  中国の水素・燃料電池産業は中央政府の設定した野心的な目標(2020年までに燃料電池車100万台、水素ステーション1000箇所設置)を達成すべく中国各地で水素・燃料電池関連の産業パークなどが相次いで計画・設立されている。特に長江デルタ一体(上海、江蘇省、浙江省など)、広東省、武漢、そして北京、張家口および大連など華北エリアは最も盛り上がりをみせており、水素ステーションの新規設立や商用燃料電池車の新規導入数が最も多い。今回これらの都市における燃料電池関連産業の発展の実態を掴むため、張家口におけるフィールド調査を実施した。河北省張家口市は2022年の冬季五輪の開催地でもあり、“低カーボン都市”として全世界に発信するため、2020年までに張家口再生可能エネルギーモデル地区では全消費電力の30%を再生可能エネルギー利用にする計画が推し進められている。現在、市内の公共バスでは中国最大規模となる49台の燃料電池車が運行しており(2018年末までに計74台運行予定)、華北地方で第3番目の水素ステーションとなる張家口水素ステーションも一部運営が開始している。また、張家口の隣の沽源県では世界最大の風力発電利用電解水素製造基地も建設中である。本報告書ではこれら施設の視察内容を中心に報告するとともに、今後の動向について考察していく。
 
  1. 河北省(張家口周辺の)の風力発電所
河北省東部には豊富な風力資源があり、中国国内で最大規模の100MW、200MW級の風力発電所が多く存在する。今回の張家口視察ルートの途中でこれら大規模風力発電所を通り過ぎたので一部紹介する。
 
河北省官庁水庫100MW風力発電所
昌平地区からバスに乗車後、北京北西部の山脈(八達峰万里長城経由)を抜けると河北省に入る。そこから20分ほど過ぎると直径約40mの風力発電基がうねる様にフィンを回している姿が見えるくる。この風力発電所は2008年の北京五輪に合わせて設立されたもので、2007年に第1期工事が完了し、50MWの風力発電機が導入された。2010年に第二期工事が終わり、残りの50MW風力発電機が増設された。総投資額5.8億元(約94億円)。周囲に住む10万軒の住宅に電力を供給している。
 
沽源東辛営200MW級風力発電所
沽源県は河北省でも風力発電所が最も多い県であり、沽源黄蓋淖200MW風力発電所、東辛営200MW風力発電所、大脳包100MW風力発電所が既に運行中の他、大唐新能源200MW風力発電所、大扇子沟49.5MW風力発電所、十里山49.5MW風力発電所、車道沟49.5MW風力発電所など新規の大規模風力発電所も相次いで建設が計画されている。豊富な風力資源がある沽源だが、豊富過ぎるあまり送電能力や蓄電能力に限界がある。東辛営風力発電所の現場責任者の話によると、この辺りの風力発電所の棄風率は約40%にも登るという。これは全国的に見ても高い水準である(棄風率が最も高い甘粛省の2017年棄風率は33%)。この高い棄風率の対応として、東辛営風力発電所では世界最大の風力発電利用電解水素製造モデル実証事業が計画されている。同事業では風力発電の余剰電力を利用して電気分解装置により水素を製造し、沽源からほど近い張家口における燃料電池車産業などに高純度水素の供給する予定とのこと。現在水電気分解による水素製造は高コストであるため、直近では石炭の水素ガス化や天然ガスの水素転化などが燃料電池車向け水素の主力製造法とされているが、棄風を利用した電気分解による水素製造であれば本来捨てるはずであった発電電力を使用しての製造になるので経済的合理性があると言える。
(写真は元レポートに掲載)
 
(沽源東辛営風力発電利用電解水素製造モデル実証事業詳細は元レポートに掲載)
 
       3. 張家口イノベーション産業パーク
続いて張家口市の燃料電池産業開発の実態を掴むため、中心部となる張家口イノベーション産業パークを訪問した。同産業パークは張家口市の中心部である橋東区の南端にあり、主に新エネルギー関連の会社とIoT,ビッグデータ関連の企業が入居している。燃料電池スタックメーカーで水素燃料電池業界のホワイトリストに掲載されている北京億華通(SinoHytec)も入居している。また、2017年総投資総額は20億3000万元(約330億円)、敷地面積は25.4km2。工期は全3期に別れており、2016年8月に第1期が完工(21万m2)し、今後5〜10年で残りの2期地区を完成する計画。
産業パークを実際に訪問してみると、ビルが一つも無い平地にシリコンバレーを思わせる近代的な建物が集積しており一眼でこれが産業パークだと分かる。この辺りは2016年に第1期工事が終了する前は只の雑草が生える平地であった様子で、人の通りは殆ど無くとても静かであった。産業パークの入口付近には燃料電池公共バスが頻度よく走っており、再エネを利用したEV車充電ステーションが配備されている。 冬季五輪開催に向けて再生可能エネルギーモデル地区としての街づくりに取り組んでいる様子が伺える。ただ、実際に利用されている様子は無く、現在のところは展示物的な機能を果たしているようである。
 
 
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(筆)INTEGRAL Co., Ltd 2018年9月20日