■日時:2018年11月26日 カテゴリ:水素燃料電池
《中国製燃料電池の出力性能について》
 
今月21日に中国動力(China Dynamics)と中能源工程集団水素エネルギー科技(Sinomec)が燃料電池バスの共同開発で戦略提携を結び、香港の公共バス市場への参入を検討していることが報道されました。この報道で注意すべき点は、2社が香港市場向けに開発を手掛ける燃料電池バスは全長8.5m、12.5m燃料電池システム出力は40kW、60kW、100kWという点です。Sinomecが燃料電池システムを開発し、2018年12月31日までに40kW、60kWの燃料電池システムを、2019年3月15日までに100kWの燃料電池システムを納品すると報道されていますが、果たして中国で独自に100kWの燃料電池システムを開発できるところがもう現れたということなのでしょうか。
 
そこで弊社では2017年と2018年10月時点までに中国工信部が公表している補助金の対象となる新エネ車推薦目録から燃料電池車部分を抜粋し、各車種の燃料電池システム出力の統計を取ってみました。以下がその結果になります。
 
図:新エネ車推薦目録記載の燃料電池車の定格出力と車種数、弊社まとめ
このグラフをご覧頂くと、2017年、2018年共に小・中型の輸送車/バスに使用される30-40kWのものが主流となっており、2018年からは中・大型輸送車/バスに使用される60kW以上が徐々に増えており、中国の燃料電池システムの出力性能が徐々に向上していることが読み取れます。
 
弊社が実際に行った企業調査でも、中国の燃料電池メーカーのトップランナーは現在70〜80kWの燃料電池システムを新型燃料電池システムと位置づけ、2018年末から来年にかけて市場に投入予定としています。これらのメーカーの中長期的な目標出力が100kWとされており、今年10月に江蘇省如皋で開催されたFCVC2018でも国産100kW燃料電池システム開発に向けての課題が議論されていました。果たして今回の報道にあるSinomecの100kW燃料電池システムの上市は本当なのでしょうか。
 
図:上海重塑(Refire)の新型燃料電池システム(80kW)
 
因みに日本のトヨタMiraiの燃料電池システムの出力は113kW、ホンダCLARITYが103kW(スタック出力)ですので、もし事実であれば来年にも中国国産のMiraiやCLARITY並みの燃料電池システムが登場することになります。100kW燃料電池システムについては製品に関する情報が一切公表されていないため、正直疑わしいというのが筆者の感想です。
 
中国汽車工程学会(SAE)が公表している「新エネ・省エネ自動車技術ロードマップ」によれば、燃料電池車商用車の全体目標では2020年までに出力70kW2025年までに120kW2030年までに170kWとされていますので、現実的にはこのロードマップに記載されている数値がベンチマークとして今後開発が進む可能性が高いと筆者は考えています。
しかし中国では政府や学会が設定した産業目標が前倒しで達成されてしまうことは少なくないので、早ければ2020年にも中国の”国産”Miraiが出現してもおかしくないかもしれません。
今後の中国製燃料電池システムの開発動向について今後も注目していきます。
 
筆)INTEGRAL Co., Ltd 2018年11月26日