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日時:2018年9月12日 カテゴリ:再生可能エネルギー
 
【中国の棄風・棄光問題について】
 
これまでのブログでも中国の再生可能エネルギーの発展をレポートしてきましたが(中国再エネ概要はこちら)、中国は再生可能エネルギー大国であると同時に世界最大の再生可能エネルギー発電のチャンスロスの大きい国でもあります。
特に風力、太陽光、水力による発電電力は、発電能力があるものの送電能力が足りないなどの理由により利用されないことがあります。このようなチャンスロスは「棄風」「棄光」「棄水」とよばれ、中国再生可能エネルギー開発の大きな問題となっています。
 
下の図は中国の棄風率、棄光率の各地域分布を示しています。ご覧の通り、棄風では新疆自治区、甘粛省、吉林省のロス率が特に高く、30%を超えいます。棄光では新疆、甘粛のロス率が高い状況となっています。
 
 
このようなチャンスロスを低減するための対策として、中央政府は
①電力ネットワークの整備 
②蓄エネルギーの促進 
③再生可能エネルギーの立地地域の誘導 
を掲げており、各地域で計画が実行されています。
 
①については、中国西部の電気を東部の需要地に送付する「西電東送」の電線を2.7kW増加(2020年までに1.3kW追加。)、500kV以上の交流送電線を9.2km追加省をまたぐ再エネ電力受け入れの促進などの計画を打ち立てています。
 
②では、揚水発電などの既存蓄エネ能力を拡充(2020年までに揚水発電を6000万kW着工する計画)、蓄エネ技術の開発(再エネからの水素製造、その他様々な蓄エネ技術開発)  
 
③では「需要面」、「供給面」の2つの側面からの再エネ発電の地域別割当と抑制を行っています。
 
ここでは③について少し詳しく説明すると、供給面では各地域毎に再エネ発電設備導入の抑制が行われています。例えば風力では、先に述べた棄風率の高い新疆、甘粛、吉林では新規の風力発電設備導入が禁止されています。一方でエネルギー需要の高い東側の地域で新規の発電設備導入で高めの導入目標が設定されています。
 
棄光では、同様に棄光率の高い新疆、甘粛では新規の設備導入が禁止、エネルギー需要地から遠い西の地域は新規設備導入に制限が授けられています。そして需要地に近い東側で比較的高い導入目標が掲げられています。
 
需要面の政策としては、各省毎に総発電電力のうち再エネが一定比率を超えなければならないという電力割当が授けられています。
 
 
このような取り組みが功を奏し、棄風問題は2016年後半から改善し始め、2016年の17%から2017年には12%に減少しています。中央政府は、第13次五カ年計画において2020年までに全国の棄風平均を5%まで下げる目標を掲げています。
このように急速に発展した結果、高コストや棄風、棄光など様々な問題が発生している中国ですが、政府の対応は素早く、民間も迅速に対応するのが中国の特徴と言えるでしょう。
 
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