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■日時:2018年10月22日 カテゴリ:風力発電
訪問日:2018年10月17〜19日 場所:北京 中国国際展覧センター
訪問先:CHINA WIND POWER 2018
 
【2018年中国風力発電国際展示会視察報告】
 
先日10月17日に北京で開催されたGWEC主催の中国最大の風力発電国際展示会に視察してまいりました。今回のブログでは中国風力発電市場の主要プレイヤーの最新技術の展示を中心にご紹介していきたいと思います。因みに本展示会は2008年に第一回が開催され、今年で第11回目となります。
 
 
北京国際空港近くにある中国国際展覧センターの3フロアーを使った大規模な展示。会場には数万人のビジターで賑わう。展示方は世界最大規模のタービンメーカーのSiemens, Vestas, GoldWindなどが勢ぞろい。洋上風力発電の出展ブロックもあり、Siemens Gamesaや中国No.1シェアの上海電気の他、三菱電機など日本企業の出展も一部見られた。
 
中国の風力発電主要プライヤーが勢ぞろい。
各社最新の風力タービンモデルを展示する中で、最も群衆の注目を浴びていたのはビッグデータを活用した最新の風力発電制御技術、いわゆるスマート・風力タービンである。中国ではビッグデータやVRを活用した技術はあらゆる産業で急激な盛り上がりを見せているが、風力発電産業も例外ではない。会場のありとあらゆるところで中国企業が開発した風力発電状況のモニタリング・管理プラットフォームや故障予測などのビッグデータを活用した最新のシステムが展示されていた。
 
中国企業展示スペースのあらゆるところでビッグデータを活用した風力発電関連技術が展示
 
中国Envisionの最新超低風速スマート風力タービンEN-141/3.6MW
 
中国企業とは対照的に、欧米企業の展示はこれまでの国際展示会などでよく見られたスタイルで、低風速型風力タービンや大型風力タービン、ナセル内部のギアボックスの最新技術の紹介していた。この中で中国勢のようなビッグデータを活用した管理システムやVRなどの映像システムは見られなかった。このことからビッグデータを活用した風力発電関連技術は現在中国がリードしている印象を受けた。
 
デンマーク企業の展示スペースの様子
 
SIEMENS Gamesaの展示スペース。中国企業のような最新技術のド派手な演出はなく、商談用のスペースとなっていた
 
 
中国企業の展示の中でも最も観衆の目を引いていたのが中国風力発電タービントップのGoldWindの展示である。広い会場の中でもGoldWindの展示スペースは3面を使った巨大なスクリーンにVRを使った風力発電開発のシュミレーションの様子を映し出しており、とにかく迫力があり興味深い展示を演出していた。
 
GoldWindの展示スペース
 
展示スペース中央には都市と風力発電基地の模型が置いてあり、風力発電開発シュミレーションソフトが搭載されたタブレットを模型の方向に向けるとVRのスクリーンが画面上に浮かび上がる仕組みになっている。
 
タブレットの画面に浮かび上がる風力発電基地の様子。タブレットに搭載されたソフトウェア上で、設置するタービンの位置とその周りの風況情報がスクリーン上に表示される。
 
設置するタービンの詳細設計がソフトウェア上で設計できる。
 
全ての設定を入力した後、設定した風力タービン基地の事業収益モデルまで自動で算出される。この写真の画面では発電出力あたりの投資コスト、資本内部収益率などの計算結果が表示されている。
 
設計した風力発電基地の運営後のモニタリングもできる。写真はシュミレーション上で各位置に設置した風力タービンの運行状況が表示されている。発電時間、発電量などの情報がリアルタイムで表示できる。
 
また、洋上風力発電タービンで中国トップを走る上海電気の洋上風力発電基地のモニタリング・管理システムも興味深い内容だった。
 
こちらがその洋上風力発電基地の運行状況の管理システム画面。稼働中の風力タービンの発電状況、海上状況(風況、波の状況など)に加えて故障の有無とその故障状況の詳細情報まで表示することができる。上海電気のブース担当者の説明によれば、このシステムによって人による点検作業を大幅に削減することができると共に、故障時期を予測することによりタービンの発電停止時間を最小に抑えることが出来るという。2017年よりこのシステムは稼働しており、既に運営コストの大幅なコスト削減が達成されているとのこと。
 
 
陸上風力でも風力発電基地の運営状況をモニタリングするプラットフォーム開発はかなり進んでいる。
下の図は中国風力タービンメーカーのWINDEYが開発・運営をしている陸上風力発電基地管理プラットフォームである。各位置の発電状況、電力供給状況、風況、CO2削減量、ビッグデータによる故障状況予知などのデータがリアルタイムで表示され、管理することができる。
 
これらビッグデータを活用した管理プラットフォームとは他に、レーザー・センサーによる風況モニタリング技術も今回の展示会で注目を浴びていた。

この技術は、風力タービンのブレードインペラの前にある風の流れの多次元かつリアルタイムの変化を正確に測定することで「正確な風」を捉え、タービンユニットを長時間「最大の風力エネルギー」を獲得する位置に補正することができる。風の状態が悪いことで起こるタービンユニットの故障やシャットダウンが減少し、結果として発電損失を減らすことができる。この技術もビッグデータを活用した技術であるが、中国勢だけでなく欧米企業や日本企業(三菱電機)による展示も見られた。

 

 
 
 
 
最後に、中国ならではのドローンの展示もあったので紹介する。下の図は中国商用ドローン開発企業のCloboticsの風力発電基地の点検用ドローンである。このようなドローンで、一回の充電で30分程度飛行できる。現在中国の中・小型のドローン技術は世界をリードしていると言われ、電池に燃料電池を活用することで飛行時間を3時間にした最新のドローンも既に市場に登場している。需要の拡大と共にコストもダウンも進んでおり、現在中国の太陽光発電基地や風力発電基地の定期点検作業は人からロボットへのシフトが急速に進んでいる。また、このような中国製の商用ドローンは中国だけでなく、欧米市場でも採用される傾向があり、中国の大疆創新科技公司(DJI、本社:深セン市)は現在世界の商用ドローン市場シェアのトップを走る。ある統計データによると、現在世界に流通する商業用無人機10台のうち、7台が中国製と言われている。
 
今後も世界の風力発電市場でも、ビッグデータの活用を駆使した最新技術による中国の台頭はますます進むものと思われるが、ドローンのように中国製技術が世界市場を席巻するケースも今後のトレンドとして増えてくるかもしれない。
 
 
筆)INTEGRAL Co., Ltd  2018年10月22日
 
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