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■日時:2018年12月4日 カテゴリ:水素燃料電池
【中国南方地区最大の水素燃料電池メーカー視察!】
 
視察先:広東国鴻水素エネルギー(Sinosynergy)
場所:広東省雲浮市 仏山(雲浮)産業移転工業パーク
視察メンバー:NEDO(北京事務所、本部水素戦略室)、上海交通大学燃料電池研究室(胡鳴若教授、曹広益教授、INTEGRAL(中西)
 
以下視察レポートの前半部分抜粋
 
初めに
先月実施した中国トップ燃料電池システムメーカー上海重塑(Refire)への訪問インタビューに引き続き、上海重塑の燃料電池システムのスタック部分を製造している広東国鴻(Sinosynergy)を訪問した。広東国鴻は2016年9月にカナダ燃料電池メーカーであるBallardと9SSL燃料電池スタックのOEM製造に関する戦略的提携を結んでおり、バラードとの合弁会社(広東国鴻巴拉徳水素エネルギー)を雲浮市に設立している。また同年10月には上海重塑との合弁会社である広東国鴻重塑を設立し、燃料電池システム(CAVENシリーズ)の生産を雲浮市で行なっている。2017年の実績ベースでは東風特専(東風汽車子会社)に550セットのCaven 3燃料電池システムを販売している。2018年には中国Eコマース大手のJD.comの保有する150台の燃料電池輸送車にも採用されている。2017年末時点では国鴻-重塑の燃料電池システムが車用燃料電池システム市場シェアの47%を占めており、首位である。
 
なお、国鴻創業人であり董事長の馬東生氏は広東仏山政府と深い繋がりがあり、仏山政府との共同出資(仏山政府34%出資)により広東国鴻を2015年に設立している。また、馬氏は重塑科技(Refire)の創業時における出資者であり、同社創業人の林琦氏とは個人レベルにおいても戦略的パートナーである。この他、南通百応(Bing Energy)の董事も兼任しており、Bing Energy(アメリカ)とバラードの中国FCV市場参入を誘導した立役者であるとも言われており、現在の中国FCV産業における最重要人物の一人である。
 
このレポートでは2017年に完成した9SSL燃料電池スタック生産ライン、飛馳バスの生産工場を訪問した内容について報告する。
 
国鴻本社ビルにて記念撮影
 
仏山(雲浮)産業移転工業パーク
 仏山(雲浮)産業移転工業パークは、仏山市と雲浮市の2都市合作によるデモンストレーションパークとして広東省雲浮市雲湖新区の南東に設立され、古い歴史のある町の中に位置する。開発区の計画区域総面積は7.72平方キロメートルであり、中心区域は3.2平方キロメートルとなっている。
 
元々は仏山市と雲浮市のどちらに水素エネルギー産業パークを設立するかで議論になっていたが、中国政府の進める“扶贫”政策(貧困下にある都市の経済水準の底上げ)の一環として最終的には雲浮市が選ばれた背景がある。また仏山市はそれとは別に仏山市南海区において、独自に策定した水素エネルギー産業発展計画に基づき水素ステーションや水素産業研究開発プラットフォームの建設を進めている。
 
仏山(雲浮)産業移転工業パークには現在20の新エネ関連企業が入居しており、FCV関連では広東国鴻仏山飛馳汽車(Feichi Bus)などの企業が進出している。2018年の新規投資推定総額は60億4800万元(約1000億円)、水素エネルギー関連では上流で8つの開発プロジェクト、中流で7プロジェクト、下流で5プロジェクトが進行中である。うち燃料電池システムの開発とFCV開発に関するプロジェクトへの投資額は最も大きく、41億元となっている。2018年の新規投入予定の燃料電池公共バスは300台である。
 
図①:雲浮市開発区中心区域
図②:仏山(雲浮)産業移転工業パーク(右図は中心棟入り口、人民の生活の質向上が目標として謳われている)
 
 飛馳(Feichi)燃料電池バス生産工場、水素ステーション、国鴻本社ビル
一行は仏山(雲浮)産業移転工業パーク到着後、中心棟にて広東国鴻董事長の馬東生氏自ら出迎えて頂いた。我々のために手配された飛馳の最新の大型燃料電池バス(11m、88kW)に乗り込み、飛馳燃料電池バスの生産工場へと移動した。なお、このバスは88kW燃料電池システムと36kWリチウムイオン駆動電池を搭載したいわゆる レンジ・エクステンダーFCEV(中国では“電電”ハイブリッドと言われている、別ブログ記事参照 である。170Lの水素タンクを積載し、最大で450km走行が可能。因みに現在中国で生産されているFCVのほぼ全てがレンジエクステンダータイプである。トヨタMiraiのような燃料電池単独での駆動はできない。
 
図③飛馳大型燃料電池バス 燃料電池システムはバス後部に収納されている
 
乗車から数分で工場に到着すると、そこには完成したばかりの青色の30kW中型燃料電池バスが整列していた。年末までに仏山市の市内公共交通バスとして300台が納品される見込みで、来年から広東で初となる燃料電池車の商用化プロジェクトが開始される予定とのこと。同工場は国鴻の燃料電池スタックの生産工場と同様に2016年に建設が着工し、僅か一年という驚異的なスピードで完成した。年間生産能力は5000台。
 
図④飛馳FCV生産工場前には完成した30kW中型燃料電池バスが整列 右図は工場内の様子
 
⑤飛馳30kW中型燃料電池バス
 
工場の裏側にはバックアップ電源用の燃料電池も備え付けられており、現在実証モデル実験中だとのこと。バックアップ電源用の燃料電池はバラード製で電源容量は5MW。

水素ステーション見学を終えると、広東国鴻本社ビルを訪問した。ロビーには 2017 年に完成した燃料 電池スタック生産工場の製品が展示されていた。

国鴻のバラード9SSLの・・・この続きはレポートにて閲覧可能です。

 

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