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■執筆日時:2019年1月8日 カテゴリ:水素燃料電池
【2018年の中国FCV生産台数統計発表!】
7日に2018年の中国水素燃料電池車の生産台数の統計データが報道されました。OFweek(中国メディア)が報道するデータによれば、2018年の新規水素燃料電池車の生産台数は合計1619台。12月に集中するようにして生産台数が増加し、燃料電池合計出力では50.91MWに達し前年比54.27%増となりました(2018年までの統計データは「中国水素・燃料電池産業の最新動向」レポート参照)。
図1、中国水素燃料電池車累積生産台数

(出典:実績値OFweek報道ベース。目標値は新エネ・省エネ自動車技術ロードマップ、中国汽車工程学会(SAE-China)2016年10月より弊社まとめ、)
データによれば、2018年に生産された水素燃料電池車は全てバスと輸送車であり、これまでの傾向と一致しています。
また、自動車メーカー別のシェアは上位に集中している傾向があり、特に上位2社(中通、飛馳)だけで生産台数の71%を占めています。一般に輸送車はバスよりも一回の販売契約での出荷台数が大きく、例えばトップの中通は2017年末に大洋電機(Ballardの大株主でBallardの燃料電池システムFCveloCityのOEM生産工場を保有)と燃料電池車の商業化で戦略締結を結んでおり、これらのプロジェクトを通じた大型の発注が中通のシェアを押し上げたものと考えられます。
飛馳汽車、北汽福田、宇通バス、中植汽車、南京金龍、申龍バスなどFCVバスの開発を主要とする自動車メーカーはバスの一回の販売契約における出荷台数自体は少ないものの、中国各地で進行している市内公共バスの実証運行プロジェクトに独自開発のFCVバスを投入してきています。
図2. 2018年中国の水素燃料電池車の自動車メーカー別生産台数

中央政府工信部が発表している2018年の【新エネ車推薦目録】(第1批から第13批まで)に登録されたメーカー別のFCV車名数を調べてみると、東風汽車、中通、宇通、申龍、福田で登録車名数が特に多いことが分かります。これらのメーカーは各都市で進行しているFCV商業化実証運転プロジェクトに第1弾として少数のFCVを投入しているものと考えられます。なお、2018年は第1批から第13批までで合計57企業、86車名が登録されています。
図3. 2018年中国【新エネ車推薦目録】の燃料電池車メーカー別シェア(登録車名数)

(出所:工信部【新エネ車推薦目録
】
より、図弊社作成)
次に、新エネ車推薦目録に登録されたFCV車の車輛形態について調べると市内バスが一番多く(45種)、輸送バン(22種)は全体の約1/4となっています。
図4. 2018年中国【新エネ車推薦目録】の燃料電池車車輛形態分類

(出所:工信部【新エネ車推薦目録】より、図弊社作成)
続いて、新エネ車推薦目録に登録されたFCVが搭載している燃料電池システムのメーカー分類を調べてみると、北京億華通(SinoHytec)、広東国鸿重塑(Sinosynergy - Refire)製が半数を占めていることが分かります。
それぞれの燃料電池システムについて、億華通の燃料電池スタックはカナダHydrogenicsの輸入品、国鸿重塑の燃料電池スタックはカナダBallardのOEM中国製造品又はOEM改良品(双極版は独自開発)を採用し、それを独自の技術でシステム構築し独自のブランド製品を開発しています。なお、弊社は昨年広東国鸿と上海重塑それぞれを企業訪問しており、別途執筆した仏山・雲浮水素産業パーク視察レポートにて同社の許可を得て同社の燃料電池開発の取り組みについて紹介しています。
中国国産の燃料電池スタックの技術レベルも向上してきているものの、製品寿命、出力効率、製品安定性などの性能で依然として海外製と一定の差があり、2019年以降もしばらくはスタックなどのコア部材は海外製を採用した燃料電池システムが市場を席巻するものと予想されます。
図5. 2018年中国【新エネ車推薦目録】の燃料電池システムメーカー別シェア

(出所:工信部【新エネ車推薦目録】より、図弊社作成)
続いて燃料電池システムの出力効率について調べてみると、30-40kWの出力範囲のものが最も多く39%となっています。しかし40kW以上のものも全体で30%を占め、前年度の同項目のシェア17.6%から大きく伸びています。中国のFCVはほぼ全てがレンジエクステンダータイプ(動力電池と水素燃料電池のハイブリッド、中国語では「増程式」又は「電電ハイブリッド」と呼ばれる)ですが、補助金交付の対象となる燃料電池に対する性能要求も年々厳しくなってきており、上海市では燃料電池システムの出力が駆動モータ出力の50%以上、または60kW以上の定格出力という条件を達しているもののみ補助金最高額を支給するとしています(中型、大型商用車で50万元、小型商用車で30万元、乗用車で20万元)。
このような政策的な取り組みとシステムメーカーの市場競争により今後も中国産燃料電池システムの出力性能も段階的に向上して行くことが予想されます。
図6. 2018年中国【新エネ車推薦目録】の燃料電池出力別シェア

(出所:工信部【新エネ車推薦目録】より、図弊社作成)
筆)2019年1月9日 INTEGRAL Co., Ltd
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