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■日時:2019年3月10日 カテゴリ:その他
 
【中国の外国企業IP(知財)権利保護を巡る動きについて】
 
日本企業様が中国市場参入への検討を行う際、様々なリスクを想定することになりますが、中国企業による外資企業の保有する知的財産権の順守と中国政府による知財の保護はその中でも最も懸念されるリスク要因の一つです。今回のブログでは、中国の外資企業を誘致する観点から進めている知財保護への取り組みの一端を紹介したいと思います。
 
先日の日本出張で多くの日本企業様と面談を行い、私が感じたことは日本企業様のほぼ全てが中国市場を今後参入を真剣に検討すべき重要な市場であると感じているということでした。
 
重要なのは十分に分かっているが、中国ビジネスは難しい。リスクが大きく、市場の先行きの見通しが不透明、という考えを多くの企業様が持たれていました。
 
例えば、ある日本を代表する製造業者A様は、かつて日本の主力製品の中国市場への展開を行った際の出来事をこう話されていました。製品が売れ、いよいよ中国現地工場で量産体制に入るという段階で国から製品トレーサビリティ(国際品質管理基準ISO 8402のようなもの)の観点から製品の生産過程、原材料の調達先の市場への開示を求められたため、開示した。しかし、後に取引先の原材料サプライヤーに中国製造業者が接触するといった出来事が頻発し、模倣品まで市場に出回るようになった、と当時のことを苦々しく話されていました。
 
このように企業モラルやIP順守の欠如が日本企業の中国市場参入の際の妨げになっていることは明白でしょう。
 
 
それでは現在の中国政府はこの問題をどのように捉えているのでしょうか。
 
 
昨年2018年11月5日に上海にて開催された第一回International Import Expo (CIIE)における習首席によるキーノート演説に、外資企業のIP保護の観点が述べられていたことが印象的でした。
 
第一回International Import Expo (CIIE)における習首席によるキーノート演説(下の図をクリックすると実際の演説録画が見れます)
 
このスピーチのIP保護に関する部分の原文をそのまま引用すると、以下のように述べられています(動画再生00:20:00付近)。

ー Full text: Keynote speech by President Xi Jinping at opening ceremony of 1st China International Import Expo Source: Xinhua| 2018-11-05 18:25:25|Editor: Lu Hui 

Third, we will foster a world-class business environment. China will introduce the law on foreign investment at a faster pace, and institute an open and transparent system of foreign-related laws. We will implement, across the board, the management system based on pre-establishment national treatment and negative list. We respect international business rules and practice, and provide equal treatment to all types of businesses registered in China. We protect the lawful rights and interests of foreign companies, and are resolute in meting out, in a law-binding manner, punishment for violations of the lawful rights and interests of foreign investors, particularly IPR infringements. We will enhance the credibility and efficiency of IP examination, and put in place a punitive compensation system to significantly raise the cost for offenders. Improvement of the business environment is an on-going process, and there is always room for things to become better. Countries need to improve their business environment by addressing their problems. They should not just point fingers at others to gloss over their own problems. They should not hold a “flashlight” in hand doing nothing but to check out on the weakness of others and not on their own.

(URL: http://www.xinhuanet.com/english/2018-11/05/c_137583815.htm)

 
赤文字部分日本語訳:
我々は外国企業の合法的な権利と利益を保護するため、法的拘束力のある方法で外国投資企業の合法的な権利と利益の侵害、特にIPRの侵害に対し、処罰を持って毅然と対応する。我々は、IP審査の信憑性と効率を強化し、権利侵害者の代償を大幅に上げるため懲罰的補償システムを導入する。
 
 
同演説が行われた4日後、中国最高人民法院で関連部門の代表者が召集され、外国企業のIP権利の保護のためのIP侵害の懲罰保障制度の導入および実施を行っていくことを強調しました。また、中国最高人民法院における知的財産権法廷を速やかに設立し、国家レベルでの知的財産権訴訟ケースの処理能力を向上し、健全な民間企業のビジネス環境を整えていくことを強調しています。
 
(出典:中国新聞網 http://news.zhichanli.cn/article/7370.html)
 
この一連の措置は、中国が今後戦略的に外国企業を誘致し、外資投資企業の投資を呼び込むためには外国企業IPの権利保護を徹底することが不可欠であることを政府レベルで認識していることを示唆しています。
 
 
今から約20年前、知的財産という概念がほぼ形成されていなかった中国が、2001年にWTOに加盟したことを発端として国内で知的財産権に関する法整備が進められきました。2008年には国家知的財産権戦略要綱が制定され、特許法、商標法、著作権法などの法規文章が策定されました(参考:国家知的財産権局、http://english.cnipa.gov.cn/lawpolicy/patentlawsregulations/index.htm)。
 
しなしながら、民間レベルで知的財産権の概念が芽生えるまでの過渡期に日本企業を始めとする多くの外国企業が成長する中国市場に参入し、結果として知財権の侵害や模倣品の発生など不健全な技術の漏洩を目の当たりにしてきました。
 
このような過去が外国企業が中国に対する信用を損ねる負の遺産となり、日本の場合はこれに加えて歴史を巡る地政学的なリスクも加わり、これが多くの日本企業の中国市場参入の妨げ、中国ビジネスの難易度を上げている主要な要因になっていると考えます。
 
その中で中国政府による外国企業のIP権利の保護のための懲罰保障制度の導入は、状況改善のための大きな一歩になるのではないかと期待しています。
 
 
弊社では日々中国企業と接触している中で、従来の古い体質の中国企業から若い世代が率いる新しい時代の中国企業まで様々な企業との出会いがあります。その中にはベンチャーキャピタリスト的なマインドを持った経営者から長期で着実に技術を育てていく姿勢の経営者まで実に様々ですが、確実に感じることはIPの順守などの企業モラルをしっかり持った企業は実はかなり増えてきている、ということです。
 
弊社としては、日本企業様がより安心できるように市場情報の提供から企業紹介などを通じて、変わりつつある中国の時代の流れに乗れるよう、引き続き日本企業様のサポートに尽力してゆきたいと思います。
 
2019年3月10日 INTEGRAL株式会社
 
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