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■日時:2019年5月18日 カテゴリ:水素燃料電池
 
【中国MEA国産化の動きが加速、新規参入相次ぐ 将来競争激化か】
 
 

今年3月27日、美綿能源が出資しているSinoHykey (鸿基创能(広州)有限公司)は広州黄埔区において年生産能力30万平米のCCM, MEAの生産工場が竣工したというニュースが流れました。2019年末には量産化していく体制にしていくとのこと。また、今年2月に擎動科技(Hydrogine)が中国初のロールトゥロール直接塗布法によるMEA生産設備が稼働しました。他にも数社MEA関連の会社で、今年生産工場を立ち上げるという話を聞きます。

 

中国では従来国産のMEAを作れる会社は数社しかありませんでしたが、近年新規プレイヤーの参入や従来のMEA開発企業の投資活動が一層目立つようになりました。

 

これは2020年~30年までの新規FCV投入計画が各都市で相次いで発表されるとともに、これらの都市で商業運行の実証プロジェクトが進行していること、水素ステーションの普及が着実に進んでいること、などから将来のFCV需要の拡大を見込み今から戦略的に布石を敷いていると解釈することができます。

 

また、MEAは燃料電池における核心部位であり、開発の技術難易度は非常に高く、開発には長い年月と大量の資金投入が必要となるため一般に新規参入のハードルは非常に高いと言われています。

 

しかし最近、先進的な技術を持つ国外企業や欧米の研究機関で研究開発を行っていた人材(華人を含め)の取り込みを積極的に進めている中国企業が見られ、スタックやこれまで難しいと言われていたMEAの中国での内製化を目指す動きが活発になってきています。また、この領域は製品付加価値が高く、高い投資資本回収が見込めること、そして将来的には海外輸入のMEAを採用したスタックの補助金適用は制限される可能性が高いこと、などから内製化MEAへの投資は今後ますます増えることが予想されます。

 

また、中国MEAのビジネス環境については、インテグラルのデータベースにある、中国のFCV水素サプライチェーンの投資環境分析一覧表も合わせてご参照いただけたらと思います。

 
 
今回はこれら新規参入した中国のMEAプレーヤーから従来のメーカーまで代表的な数社を以下にご紹介します。
 
 
鸿基創能(SinoHyKey)は2019年3月に、CCMとMEAの第1期生産ラインが竣工完了。年産生産能力は30万m2(FCEV商用車約6万台分)で、初期生産量は6億から10億元と見込まれている。同社CTOの叶思宇氏は元BallardのCTO及びカナダ国家工程院院士
SinoHyKeyは既に複数の自動車OEMおよび燃料電池メーカーとパートナーシップを構築していると言われている。
 
 
同社は中国で最も早くからMEA開発を行っている企業で、これまで累計で100万ユニットのMEAを海外に輸出しており、現在世界シェア3位。同社はバックアップ用MEA、車用MEA、フォークリフト用など各アプリケーション専用のMEAを開発している。 2018年末にCCM商業生産工場が竣工しており、年間生産量は2万m2
 
 
3. 擎動科技(Hydrogine Technology)(http://www.hydrogine.cn/index.html)
2019年2月に国内初の自主研究開発の「Roll to Roll直接塗布法」MEA生産ラインが竣工し、年間生産能力は100万枚(約1万m2、FCV商用車約3000台分) で、生産額は3億元超となる見込み。20社以上の国内顧客と3社の海外顧客を保有。触媒は自社開発。
 
 
4. 新源動力(SUNRISE POWER)(www.fuelcell.com.cn)
2001年に中国科学院大連化学物理研究所と蘭州長城電工股份有限公司によって大連ハイテク開発区に設立される。現在は上海汽車が主要株主。
PEM燃料電池発電システムの主要材料およびシステム全体の部材に関する、合計400余りの知的財産特許を有している。武漢理工大学と並んで、中国で最も早期からMEA開発を行っている企業であるが、最近は同社のスタックはGore社のPEM膜が採用されている。
2018年に開発された燃料電池システムHYMOD-300の製品寿命は金属板スタックを採用した燃料電池としては国産最長の5000時間と言われている。
 
 
5. 桑莱特(Sunlaite)(http://www.sunlaite.com/)
触媒、MEAから燃料電池スタック、動力電池までの幅位広い知的財産特許を保有している。 超低白金搭載量のMEA技術を持つ。
 
 
 
6. 愛徳蔓(Edelman)(www.cemt-cn.com)
金属双極板の表面加工技術とMEA生産の核心技術を保有している。 浙江省嘉興市に中国発の金属板燃料電池スタックの生産ラインを構築し、30kw、35kw、40kw、および45kwの燃料電池スタックを生産している。年間生産能力は2,000ユニット。2019年3月に広東省仏山市に新たな生産ラインを建設中。 
 
 
7. 東焱氢能源(DOINPOWER)(www.doinpower.com)
南京大学、南京市麒麟科技創新園及び江蘇啓迪科技園発展有限公司によって設立された。MEA開発では、ナノ触媒、ナノ電極と水素発電システムなどの核心技術特許を保有。MEAの年間生産能力1,000 m2
 
 
8. 深圳市南科燃料電池(Southerntech Fuel Cell)
元カナダ国家科学院院士の王海江教授(南方科技大学教授)らの研究者によって設立される。MEA、スタック、双極板の開発を手掛け、2019年内に年生産能力10万m2のMEA生産ラインを稼働開始予定
 
 
9. 俊吉科技(JUNJIKEJI)(http://www.sxjunji.com/nav/1.html)
水素燃料電池の核心材料、スタック及びBOP電の開発と生産に従事。製品はFCVの他、無人機、バックアップ電源、ガスセンサーなどに採用されている。
 
 
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