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■カテゴリ:新エネ車 日時:2019年5月28日
 
中国の燃料電池スタックの性能寿命について
 
20193月にアメリカのNREL (National Renewable Energy Laboratory)FCEVの寿命に関する走行試験の結果を公表しました(https://www.nrel.gov/docs/fy19osti/73011.pdf)。本調査は、6社の自動車OEMFCEV (GM, Toyota, Honda, Nissan, Hyundai, Mercedes-Benz)に関して走行試験を実施し、製品寿命の一つの節目である燃料電池スタックの電圧降下が10%を上回った時点での航続距離を調べるというもの。(*Toyota MiraiとHyundai Nexoはデータ非公開につき分析対象外とのこと)
 
 
本報告書によれば、僅か22%の車両のみが2000時間以上走行し、最高走行距離は5648時間(DOE2020年目標は5000時間)であったと記載されています。報告書では更に、電圧降下が10%に達した時の車両の平均航続時間は2000時間で、電圧降下が30%に達した時の平均航続時間は5000時間であったことから、DOEの目標を達成するには大幅なスタック性能の向上が必要であると述べています。
 
 
 
何故上の内容を取り上げたかと言うと、現在多くの中国燃料電池メーカーが対外的に公表している燃料電池スタック・システムの製品寿命データの多くは、上記のようなオンロードでの実績値でない場合が多いからです。多くの場合は実験室での加速試験装置での実測値であり、製品の採用検討の際には当然のことながらオンロードでの実績値が重要となります。
 
 
また、オンロードであっても海外の道路環境と中国の道路環境は条件(例えば空気環境など)も異なるため、中国でのオンロードでの実績値が重要となります。しかしながら中国のFCV商用化の歴史はまだ浅く、現在走行しているFCバスやトラックのほとんどは実証運行という名の元まだオンロードでの実績値を収集している段階であり、本当の意味での製品寿命は実際のところまだ不明であると言うことができます。
 
 
また、中国のFCVはほぼ100%レンジエクステンダータイプの燃料電池車であり、日本のMiraiClarityなどの純燃料電池車と異なり動力の過半数は動力電池から出力されているため燃料電池への負荷も小さくなります。そのため、同じ定格出力の燃料電池を搭載した車であっても、動力電池の出力比によって燃料電池への負荷も異なり、結果燃料電池の寿命に差が出てくるということです。
 
 
何が言いたいかというと、今年6月に中国燃料電池車に関する補助金の新基準が発表される見込みとなっており、燃料電池の定格出力及び燃料電池対動力電池の出力比の要求が変更されることにより、今後中国FCVの寿命に影響してくる可能性があるということです。筆者の個人的な見解としては、今まではレンジエクステンダータイプで、燃料電池への出力要求が低かったことから問題になっていなかった(オンロードでの)寿命の問題も、上のNRELのケースのように今後中国では燃料電池への要求が高まるにつれて徐々に顕在化してくる可能性があると考えています。
 
その意味でも、今年発表される補助金新基準は燃料電池車の経済性への影響だけでなく、製品寿命にも影響してくると考えられるため、内容が注目されるところです。
 
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