この記事を共有する:
記事の閲覧数:67
■日時:2019年10月22日 カテゴリ:水素燃料電池
 
【安徽省の主要燃料電池メーカー明天氢能(Mingtian Hydrogen Energy)視察】
 
視察先:安徽明天氢能(Mingtian Hydrogen Energy)本社
場所:安徽省六安市水素産業パーク内、明天氢能本社
 
先週、安徽省の主要燃料電池メーカーの明天氢能(Mingtian Hydrogen Energy)を大阪政府上海事務所と共に訪問して参りました。Mingtian Hydrogenからは王朝雲董事長(同社創業人)並びに主要経営陣一行に出迎えて頂きました。
 
中国水素エネルギーをウォッチされている方でも、明天氢能という燃料電池メーカーの名前をまだ聞いたことがないという方も多いと思います。
 
それは明天氢能は2017年8月に成立したばかりで、安徽省は中国水素燃料電池産業の中でも燃料電池関連のプレーヤーは少なく、地方政府による同産業支援政策や発展ロードマップは六安市が2019年4月22日に公表した(六安市人民政府关于大力支持氢燃料电池产业发展的意见)ばかりで、中国水素燃料電池業界の中では比較的後発にあたることが考えられます(他の中国地方政府の政策動向については弊社のレポートを参照)。
 
明天氢能本社(安徽省六安市の先端テクノロジーパーク内にある、同パークはまだ建設中で入居企業はまだ少なく閑散とした様子)
 
しかし近年、明天氢能は同地区における水素燃料電池産業の発展を牽引すべく、安徽省政府、六安市政府による後方支援を受けながら、僅か2年ばかりで地元に巨大な(2万平米)水素燃料電池スタック、システムの生産工場、並びに水素ステーションを立ち上げています。
 
明天氢能本社の全体図。現在写真手前の湖周辺の施設(燃料電池評価センター、社員寮)と右奥の燃料電池スタック・システムアップ工場の第一期工事が竣工したばかり。左奥の施設はMEAや補機などの自動生産工場で、2022年までに建設予定とのこと。計画では2022年までに燃料電池スタック・システムで年産10万ユニット、2028年までに年産30万ユニットの生産能力を実現するとのこと。
 
同社は既に同じく地元の安凯バス(Ankai)などと共に開発した水素燃料電池バスを市場に投入しており、間も無く市内実証運行が開始されます(バス301路線10台、金安区物流港にトラック10台)。
 
年内に六安市内の交通網に投入予定の安凯バス開発の燃料電池バス
 
同社創業人の王朝雲氏並びに研究開発チームの多くは同済大学燃料電池自動車研究室の出身者から構成されており、中国科学院大連物理化学研究所から研究開発支援を受けている(同社によれば、中国工程院の著名な院士衣宝廉も研究開発を支持しているとのこと)。同社の特徴としては、地元政府や地元企業との関係力が強いこと、比較的競合プレーヤーが少ない安徽省において燃料電池開発・生産に関する先行投資を積極的に進めていること、システムメーカーでありながら水素生産・貯蔵・輸送、水素ステーション運営にまで事業を広めていること、などが挙げられます。言わば、中国水素燃料電池産業におけるダークホース的な存在と言えるでしょう。
 
王朝雲氏 同社創業人(写真左) 同済大学汽車研究院博士、元奇瑞(Cherry)、福田汽車研究開発者  
许思传氏 共同創業人兼同社CTO 現同済大学汽車研究院教授(写真右)
 
明天氢能の提携パートナー・エコシステム(地元Ankaiバスを筆頭に、Karry、Cherry、南京金龍バス、Hualing、東風汽車、宇通バスなどとFC商用車の開発で提携している)
 
本訪問では、特別に同社の燃料電池生産工場の一部の施設を見学させて頂きました。
まだ竣工したばかりということで工場内には作業員の姿は見えませんでしたが、導入したばかりの最新の燃料電池関連部品生産設備がずらりと並んでいる姿は見応えがあります。同社が自社設計・製造しているグラファイトセパレータと金属セパレータの加工設備は全て全自動となっており、全て海外輸入品を使用している様子が伺えました(日本製の設備もありました)。特にセパレータの表面処理を行う設備は非常に大掛かりな装置であることが伺え(海外からの輸入品)、同社によれば中国国内でも表面処理の技術はトップクラスであるとのことです。
 
同社のセパレーター生産工場と燃料電池システム組み立てラインの一部を見学(写真左:同社購買部部長の程宏波氏により工場の説明を受ける一行 写真右:大阪政府上海事務所一行と中西)
 
最後に、同社が運営している水素ステーションの見学を行いました。
同ステーションは、同社が開発した燃料電池システムを搭載する燃料電池車の実証運行用に限定された、非商業用に運営されています(建設はSunwise)。因みに、写真奥の青色の建物は明天氢能の燃料電池生産工場で、ステーションは工場敷地に併設されています。現在は年内にも開始予定の市内FCバスの実証運行に備えており、既に35MPaの水素充填設備が置かれていました。
 
 
ステーションの水素は現在は天然ガスの改質装置によるオンサイト型の水素供給体制となっております(AirProduct製の設備)。1Kgあたりの水素調達コスト(生産、貯蔵)は40元とのことで、水素販売価格は1Kg 40元以下を目標にしているが、上記水素調達コストにステーションの運営コストが更に掛かるので補助金無しでは赤字となるのが現状と話されていました。現在安徽省六安市政府は水素ステーションの建設に補助金を付与する政策を2019年4月に発表していますが、水素充填に関する補助は今のところまだ制定されていません。
 
同社によれば、今後水素の調達コストを下げるために、六安市の化学プラント(苛性ソーダ生産プラント)からの工業副生水素の調達を検討しており、同時にステーション施設内に低温液体水素の貯蔵設備を導入(AirProduct製)し、水素の輸送量と貯蔵量を上げることで更なる水素調達コストの低下と安定供給体制の構築を目指す、とのことです。
 
我々が工場を後にした翌週(10月18日)に、明天氢能の燃料電池スタック生産ラインの竣工式が開催され、安徽省六安市市長や中国科学院、中国汽車工程学会(SAE China)の関連者、並びに民間企業約30社が地元における燃料電池メーカーの誕生を祝福していました。
 
明天氢能燃料電池スタック生産工場の竣工式とパートナー企業との戦略提携署名式の様子(2019年10月18日)
 
 
■ 新規入会登録はこちらから(会員登録は無料。ご登録頂くと会員限定のサンプルレポートの閲覧・ダウンロードの閲覧が可能になります)
この記事に関して自由なご意見・ご質問を募集しています!下のコメント欄に記入お願いします。