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 ■ 日付: 2021年5月19日
【燃料電池試験市場、中国水素産業の新たな有望な波となるか?】
 
この記事の筆者
 
2018年には、長城汽車(Great Wall Motors)が河北省保定市に中国最大級の水素研究開発センターを稼働させ、1億4,000万人民元を投資して100台以上の燃料電池試験装置を導入した。同様に、中国で燃料電池の生産拠点を建設したばかりの燃料電池・システムインテグレーターも、量産に向けてより多くの試験装置を調達している。例えば、山東省濰坊市の大手国有燃料電池商用車メーカーである濰柴(Weichai Power)は、Hephas Energy社、Kewell社、Rigor社から70台の試験装置を調達した。
 
 こうした動きは、燃料電池試験市場が中国の水素産業の次の波であることを意味するのだろうか?この質問に答えるために、この記事では、燃料電池試験産業を調査し、今後20年間の市場の可能性を検証する。
 
長城汽車の燃料電池試験所
 
現状
 
 水素燃料電池市場の発展に伴い、燃料電池試験分野も中国の燃料電池産業の勃興と共に発展している。これまでに500台以上の燃料電池試験装置が市場に導入されていると推定され、そのうち珠江デルタ地域と長江デルタ地域が市場需要の60%以上を占めている。この2つの地域では物流産業が発達しているため、高出力燃料電池車が今後都市間をまたいだ輸送の分野で広く普及されていくことが見込まれている。また、湖北省と山東省の試験装置の導入数も他の地域に比べて堅調である。これらの地域における旺盛な試験装置の需要は、燃料電池市場を開拓しようとする地方政府のイニシアティブに合致しており、燃料電池及び燃料電池車の産業育成が促進されており、それにより試験装置の需要が拡大していると考えられる。
 
 また、現在の市場は中出力域(60kW-99kW)の試験装置が主流であるが、将来的には高出力型の試験装置の需要が育つことが予想される。中国では、燃料電池の特性は長距離輸送車に適していることから、この分野における燃料電池商用車が中国政府によって奨励されており、中国燃料電池、自動車メーカーは補助金を受けて高出力型の燃料電池開発に取り組んでいる(図2参照)。そのため、高出力レンジの燃料電池試験装置が必要となり、この分野が試験装置メーカーにとって新たな主要なターゲット市場になると予想される。 
 
図1:地域別・電力範囲別の燃料電池試験装置市場のカバー率
 
図2:2018年から2020年までの燃料電池車の定格出力推移
 
市場の推移
 
 2016年以前は、燃料電池試験装置を購入するのは、研究目的の大学や研究機関が中心であった。しかし、中国では購買者の購買力は限られていることから、調達予算にも制限があった。このため、高額な海外製品の購買を躊躇するバイヤーが多数存在している。そのため、国内で調達できない場合は、海外から試験装置の主要部品(電気負荷部品など)を輸入し、単一燃料電池セルの試験装置を自作する慣習が存在していた。
 
 中国で燃料電池市場が発展し始めると、企業ユーザー(燃料電池スタックおよびシステムインテグレーター、燃料電池車メーカー、第三者試験機関など)が次第に主流の購買顧客になり、製品の好みも、単一燃料電池セルの評価試験から中高域出力のスタック試験措置へと移行し、主要部品やバランスオブプラント(補機、BOP)の診断も行われるようになった。また、中国では近年、燃料電池試験分野において国内プレイヤーが台頭してきている。
 
“国内サプライヤーは、低価格と優れた顧客サービスを提供することで、かなりの市場シェアを獲得しており、その中でもアフターサービスは事業運営において重要な役割を果たしており、事業時間全体の少なくとも40%を占めている。” 中国の主要な燃料電池試験装置サプライヤーであるHephas Energy社の某上級幹部は,弊社のインタビュー時にこのように述べていた。
 
 一方、燃料電池システムとスタック試験装置は、中国で最も競争力のある分野の2つとなっており、国際的にも国内的にも競争が激しい。それに加えて、業界のプレイヤーは、電力市場での大きなシェアをあらかじめ確保するために、高出力燃料電池スタック(100kW以上)やシステム(150kW以上)のテストベンチの研究開発に取り組んでいる(図3)。
 
図3:自動車用燃料電池試験装置の競合市場
 
燃料電池試験市場が抱える問題点
 
 その一方で、現在の市場には2つの問題点があり、プレイヤーのシェア獲得の動きを鈍らせている。
 
1. 自動化レベルについて
 燃料電池試験装置業界では、自動化レベルが懸念されている。圧倒的に多くの試験装置が、国内外のプレイヤーに関わらず、人手不足に陥っている。この現象には2つの事情がある。第一に、過去10年間、試験装置のニーズが主に学術機関や研究機関からもたらされる川下の需要が限られていたため、生産能力拡大の必要性が高まっていなかったことが挙げられる。そのため、装置メーカーが生産自動化を検討する必要性がなかった。第二に、試験装置のカスタマイズは製品提供において一般的に行われているが、中国における試験方法の標準が不完全であるため、川下のクライアントが試験項目に対する要求事項は依然として曖昧である。その結果、試験装置サプライヤーは、現地の基準に合わせて標準化された製品を大量生産することができていない。
 
2. 海外プレイヤーの長い納品期間
 中国国外でのみ製造する海外プレイヤーにとって、納期は非常に重要な課題である。海外製の燃料電池スタック試験装置の平均的な納入期間は、最大2年がかかると推定されている。一方、大多数の国内メーカーは、カスタマイズされたテストベンチを最長6ヶ月で提供できる。言い換えれば、特に市場の需要が急速に伸びている状況で、納期が長いと、中国における海外プレイヤーの競争力がある程度弱くなる。川下のバイヤーが外国製品を調達するのを妨げ、国内サプライヤーが市場シェアを伸ばしている要因となっている。
 
将来の市場規模
 我々の予測では、中国における燃料電池車の普及台数は2035年までに340万台、2040年までに690万台に達すると予測する。また、我々の分析では、燃料電池車の台数と燃料電池試験装置の間には大きな相関関係があることから、中国全体の燃料電池試験装置市場のベースケース推定値は、2040年に28,000台になると推定している(図4)。燃料電池車の普及予測の詳細については、【中国では2050年までに2,980万台以上の燃料電池車が走行する】を参照されたい。
 
 我々の分析では、2040年の燃料電池試験装置市場の潜在需要は、2020年の52倍に増大する可能性があることが判明している。一方、現地の主要部品生産の成熟化により、試験装置の平均販売価格が100万人民元まで下がると仮定すると、2040年の産業価値は280億人民元を超え、現在の市場価値の21倍になると予想される。その結果、前述の市場の問題点が解決されると、燃料電池試験装置産業は2025年から2030年の間に商業化の初期段階に達し、力強い成長を遂げると予想される。その後、業界は徐々に成熟期に入り、2035年以降は本格的な商業化が期待される。
 
 さらに、我々の分析では、珠江デルタ地域長江デルタ地域が主要市場となり、2040年における全体の過半数を占める中国で最大の燃料電池試験需要を生み出すと予想される。これは、地方市場における水素・燃料電池産業に対する政府の政策とインセンティブ支援によるものである。一方、京津冀地域(北京、天津、河北省)、中南部(河北省、湖南省、河南省、広西省、海南省)、四川省、山東省も、大きなポテンシャルを秘めている市場である。これらの市場は、燃料電池車や川下の燃料電池プレイヤーの増加により、将来的に勃興することが予想される(我々の試算では、2040年における導入装置台数のシェアは全国の約39%に達する)。
 
 したがって、本稿の冒頭における質問について、答えは「イエス」である。
 
図4:燃料電池試験装置の需要予測(2020年-2040年)
 
 しかし、海外プレイヤーの中国市場への進出には、まだ多くの課題がある。中国における燃料電池試験の主要プレイヤーに関する詳細な分析については、今後の記事をご期待されたい。なお、本稿におけるご質問はinfo@integral.net.cnまでご連絡ください。最後に、中国の燃料電池試験業界のプレイヤーに関する次のブログもお見逃しなく。
 
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