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■ 日付: 2022年5月6日
*こちらの記事は、2022年3月23日の弊社英文ブログ【 China’s Demand Response in Action 】を翻訳したものになります。
【中国電力業界におけるデマンドレスポンスの活用状況とビジネスシナリオ】
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まとめ
1. カーボンニュートラルの実現と持続可能なグリーン経済の発展を目指し、中国は、再生可能エネルギーによる発電を増やし、電力産業の市場化をさらに進めていくことになる。このような背景のもと、政府は、これまでの化石資源を大量に利用するのではなく、需要サイドのエネルギーリソースを制御することに目を向けている。デマンドサイドマネジメント(DSM:Demand Side Management)の有効な手段として、デマンドレスポンス(DR:Demand Response)が全国、特に一級都市で、実施されている。
2. デマンドレスポンス(DR)は、他のデマンドサイドマネジメントの行政施策とは異なり、負荷リソースの扱いなどにおいてより柔軟である。V2G対応電気自動車(EV)や充電パイル、仮想発電所(VPP:バーチャルパワープラント)、蓄電システムなど多様なリソースを対象とするだけでなく、電力市場を活用し、電力需要家がデマンドレスポンスの節電活動に参加して収入が得られるように構築されつつある。(下記の河北省のプロジェクト例参照)(電力市場に関する弊社レポート:「中国の電力市場とグリーン電力取引」)
3. 負荷リソースを束ねて制御する主体として、アグリゲーターという事業者が生まれ、よりよく、デマンドレスポンス(DR)を提供する。これが様々な負荷リソースと電力供給者のビジネスチャンスにつながる。
キーワード : #再生可能エネルギー #デマンドサイドマネジメント(DSM) #デマンドレスポンス(DR) #アンシラリーサービス市場(AS市場) #アグリゲーター #仮想発電所(VPP) #V2G #総合エネルギーサービス(IES) #エネルギーマネジメントシステム(EMS)
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はじめに
2021年9月〜10月、中国の東北地域では、公共施設や住宅地などで数回の大規模停電が発生した。DSMの強行策として、地方政府が「電力の秩序ある利用(有序用电) 」という規制を実施した。電力不足が発生すると、地方政府は送配電事業者とともに電力消費の平準化を開始する。原則として、まずピークシフト、ピークカット、次に限電(節電)、最後に停電を実施する。今回の東北地域では、停電を採用しており、いかに電力供給が厳しい状況であったかを示していると言える。
どうのようにして停電は起こるのか?中国の国営電網会社が全てを計画できるのではないのか?と言うと、そんなことはない。なぜなら、東北地域は、再生可能エネルギーによる発電に大きく依存している。2021年9月に、水力発電と風力発電の発電量が、予想を下回り、これらの省では電力不足が発生した。吉林省において、すでに4.17GWの電力ピークをシフト、回避したにもかかわらず、電力不足が発生した。この緊急事態に、地方政府はDSMの対策として、需要家への電力供給を制限(限電)しなければならなかった。
そして、東北三省以外において、華東地域の他の省でも電力需要を減らすために配電規制が実施された。その大規模な実施状況は、図1に示す通りである。

図1.「電力の秩序ある利用」の分布図(2021年9月時点)
出典:(1) Sixth Tone. 2021.9.27. Power Shortages Roil Northeast China. (2) Wechat. 2021.10.9. 拉闸限电,是给氢能崛起的一个机会!
一方で、通常時は、再生可能エネルギーの断続性により、棄電が発生しやすいという課題もある。風力発電も太陽光発電も、出力時間や出力量を制御するのが難しく、最終的に電力の無駄が生じる(図2参照)。電力系統に接続する再生可能エネルギーが増えれば増えるほど、棄電の可能性は高まる。したがって、再生可能エネルギーの電力効率を高め、電力需給バランスを保つためには、需要家サイドの電力消費量を制御する必要が出てくる。

図2. 再生可能エネルギー発電による棄電
出典:INTEGRAL社
中国では、DSMは主にトップダウン型アプローチになっている。その主な方法は、「電力の秩序ある利用(有序用电) 」などが挙げられる。しかし、このトップダウン方式の仕組みには限界がある。分散型発電装置、サードパーティーによる蓄電システム、アグリゲーターの需要家サイドへの参加、が増加するにつれ、様々なプレイヤーによるリソースの運用が複雑化し、従来の行政措置ではすべての参加者に対応しきれなくなってきている。また、このトップダウン方式の仕組みは計画に基づくため、柔軟性に乏しく、成熟しつつある電力市場メカニズムとも相容れない。そこで、政府はデマンドレスポンス(DR)を中心に、より市場化された施策を推進している。この分野は、大きなビジネスチャンスを生み出す可能性がある。
本稿では、デマンドレスポンスとその代表的なDR事業、およびV2G対応EVや充電パイルの提供、VPPの運営など、DR特有のビジネスチャンスに着目して紹介する。
概要
中国のDSMの歴史は、省エネ、環境保護、グリーン電力消費、スマートエネルギー、秩序ある電力消費を網羅する一連の政策の実施によって、2010年に幕を開けた。中央の電力系統がより再生可能エネルギーや分散型エネルギーリソースと連系するにつれ、従来のトップダウン方式のDSMメカニズム(主に計画に基づく行政措置)では、より頻繁かつ激化する電力不足などの電力関連のアクシデントに対応できなくなってきている。このような、機敏な対策が求められる中、需要サイドでより市場化されたメカニズムとして、デマンドレスポンスが推進されている。
デマンドレスポンス(DR)とは?
一般に、デマンドレスポンスとは、電網会社から発信される経済的または行政的な指令に応じ、電力需要家が電力消費行動を変更することを意味する。日本語では「需要応答」とも呼ばれることもある。具体的には、1)招待モードDR、2)リアルタイムモードDR、3)経済的DRがあり、いずれも近年実施され始めてきている。
中国全土で招待モードDRとリアルタイムモードDRが頻繁に実施されるようになったが、これらの運用は、省によって異なって使い分けられている。
- 招待モードDRでは、地方政府が特定の時間に一定レベルの負荷量を調整するDRを開始する。この種類のDRでは、需要家サイドのさまざまな種類のエネルギーリソースに節電の実施を呼びかける。
- リアルタイムモードDRでは、電網会社が、地域のデマンドレスポンスプラットフォーム(広東省などではVPPプラットフォームとも呼ばれる)を通じてデマンドレスポンスの開始と解除の指示を出す。
この2種類の大きな違いは、応答時間にある。招待モードは、需要家サイドに未来の特定の時間をスケジュールするのに対し、リアルタイムモードは、需要家サイドに数分以内に応答するよう求めるものである。(江蘇省におけるこの2種類のワークフローを、本稿後半において図9と図10に例として示す。)
これらのDR参加者は、最終的に経済的に補償されることになるが、それは固定価格(政府が招待を通知する際に決定)または市場化されたメカニズム(地域の負荷変調アンシラリーサービス(補助)市場がある場合はそれを経由)で決済される。
上記とは異なり、経済的DRは、電網会社が、電力価格シグナルを経済的インセンティブ(またはディスインセンティブ)として、電力需要家の消費を誘導するものである。この経済的DRには、ピークバレー価格、居住者向け段階価格などがある。(中国の電力価格に関する記事【中国、電力価格の上限を引き上げ:変更点と業界への影響】)
例えば、北京のピークバレー価格設定メカニズムでは、一般的に、電力価格が異なる3つの時間帯(ピーク、フラット、オフピーク)で存在する。また、地方政府では7月と8月にクリティカルピーク価格 (CPP:Critical Peak Price) を設定し、大規模なDRを計画している。このように、経済的DRでは、電力需要家は価格シグナルに基づき、ピーク時には電力消費を抑え、フラット時やオフピーク時には電力消費を促すことが期待される。電力需要家は、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を用いることで、よりコスト効率の高い電力消費を実現することもできる。

図3. 経済的デマンドレスポンス:ピークバレー価格設定メカニズム(北京にて)
出典:(1) 北京市城市管理委员会.2021.12.30. 关于北京市2022年电力市场化交易工作安排的通知. (2) 国家能源局华北监管局. 2021.01.28. 关于印发京津冀绿色电力市场化交易规则及配套优先调度实施细则的通知. (3) 北京是发展和改委委员会. 2020.11.30. 北京市销售电价表.
デマンドレスポンス (DR) の2つの主要機能
1回のDR実施で、電力供給状況に応じて、需要家サイドのピークシェービング(下げDR)とバレーフィリング(上げDR)のどちらか、あるいは両方を実現することができる。下表は、中国における主なDRの実施概要である。

表1: 主なデマンドレスポンスプロジェクトの概要
ピークシェービングは、需要家サイドのピークシフトの代表的な方法である。電力消費者がエアコンや照明などの家電製品の使用を控えることを意味する。このピークシェービングをうまく機能させるために、EMSのようなスマートで遠隔操作のできるシステムが普及し始めている。ピークシェービングに参加することで、電気料金を節約し、さらには、電網会社から報酬を得ることができる。
バレーフィリングは、ピークシェービングの逆の手法である。一般的に、充電やピークシフトを行うことで、電力供給に追いつくように負荷側を増加させ、棄電を減らし、発電機を停止させないようにすることができる。(発電機を頻繁に停止させると、メンテナンス費用などがかさむ。)オフピーク時に電気を消費することで、参加者はより安い価格と報酬を得ることが出来る。
上表では、ピークシェーピング型DRが多くなっているが、現在、中国の多くの都市では、ピークシェーピング型DRとバレーフィリング型DRの両方が使われている。この2種類をよく見てみると、ピークシェーピング型DRは、主に電力安定化や電力需給バランスのために電力需要を抑えるために使われる。一方、バレーフィリング型DRは、発電機を稼働させるために一定の電力消費量を維持し、時には再生可能エネルギーの電力消費を増やすものである。したがって、中国がカーボンニュートラルに近づくために再生可能エネルギー電力をより多く取り入れるようになれば、より多くのバレーフィリング型DRが活用されるようになると想定される。
プロジェクト:河北省における国家電網のデマンドレスポンス(2021年1月)
河北省の電力系統における一例を検証してみよう。2021年1月、国家電網の河北省における子会社電力系統は、需要家サイドの調整可能な負荷を負荷調整対象とするDRを実施した。このDRは、棄風の削減、発電機の停止回避、市場化されたメカニズムの活用、電力利用効率の向上を目的として実施された。
電網会社は、華北地域の負荷変調アンシラリーサービス市場へ参入することで、さまざまな電力需要家に対する報酬を支払うことができる。従来は、発電事業者から無償で提供されるか、政府が定めた固定価格で支払われていたが、このDRでは、報酬はアンシラリーサービス市場によって価格決定される。これは、中国の電力産業が進める市場化のさらなる一歩を示している。

図4. 河北省電力系統のデマンドレスポンスの概要
出典:(1)SASAC.Gov.2018.07.30.国家电网公司创新建设智慧能源服务系统 (2) Sohu. 2021. .2. 国网河北综合能源公司“优易能”电管家“升级版”全新上线 (3) shoudian. bjx. 2021.12.15. 电量破亿!国网河北综合能源公司需求响应业务再发力 (4) mp.Weixin. 2021.1.30. 国网河北综合能源公司2020年发展侧记 (5) mp.weixin. 2021.12.31. 公司调峰辅助服务电量破亿千瓦时
図4は、河北省電力系統のもとでのデマンドレスポンスの仕組みを示している。さまざまな種類のエネルギーリソースがDRに関与し、アンシラリーサービス市場から収益を得ることができる。
国家電網河北IES社が提供するDSMプラットフォームを基盤に、河北電網会社はアグリゲーターとしてDRに参加し、調整可能な負荷リソースを束ね、最適化し、DRの指令に応えた。アグリゲーターは、DRの産物であり、DRの発展において重要な役割を果たし、いくつかのビジネスチャンスをもたらす(後述)。
2022年までに、河北IES社は26の電力需要家から100MWの調整可能な負荷を集めた「負荷タンク」(蓄能池)を設立し、契約に基づいて大容量の負荷を仮想的に集約している。さらに、電力需要家向けにEMSのアプリケーションを提供し、DR時にDSMプラットフォームと連携することができる。「YouYiNeng "优易能"」と呼ばれるアプリを通じ、需要家は自家のエネルギーマネジメントを簡単に操作でき、アグリゲーターは電力消費のデータを遠隔で監視・確認できる。(EMSの詳細については弊社レポート「2021年中国のエネルギーマネジメントシステム(EMS)市場の動向」をご参照ください。)
では、電網会社はDSMプラットフォーム上で具体的に何をするのだろうか。ここでは、ダッシュボードの詳細を図5で紹介する。一般に、DSMプラットフォームの運営者は、市場情報(アンシラリーサービス市場か電力スポット市場、またはその両方)の確認、DR実施状況(履歴、進行中の状況、今後の通知)の確認、リソースのモニタリング(容量、稼働率、リアルタイム更新)を行うことができる。このプラットフォームは、アグリゲーターの意思決定とリソースの制御を補助するもので、いわばアグリゲーターが提供する本質的な価値を支える。

図5. 河北省DSMダッシュボード
出典:(1) mp.weixin.qq. 国网河北综合能源服务有限公司.2021.1.30. 掘金综合能源服务’蓝海市场’——国网河北综合能源公司2020年发展侧记
1. アンシラリーサービス市場における取引情報...華北負荷変調アンシラリーサービス市場の取引状況をリアルタイムで表示し、取引負荷量の予測・実績、DR時間帯の取引内容なども表示する。これに基づき、アグリゲーターは市場への参入を決定することができる。
2. デマンドレスポンスの最新情報...アグリゲーターは現在および今後のDRや参加状況を確認することができる。
3. アンシラリーサービス市場への参入実績概要...アグリゲーターはアンシラリーサービス市場への過去の参入実績を即座に確認し、応答容量を確認することができる。
4. 需要家サイドリソースの最新情報...アグリゲーターはリアルタイムで負荷曲線をモニタリングし、前日の負荷曲線と比較することができる。(赤の線:昨日の負荷曲線、緑の線:本日の負荷曲線)
この事業で注目したいのは、DRにおけるアンシラリーサービス市場の利用である。これは、地方政府がDRの実施で参加者に報酬を支払うために、より市場化されたメカニズムを試みている傾向を示している。これまで、報酬の決済において、江蘇省は入札方式を導入し、陝西省と河北省はアンシラリーサービス市場を試行してきており、さらに、山東省、浙江省、広東省では、電力スポット市場の利用が計画されている。これらの試みはすべて、DSMを市場化する方向を目指している。
もう一つ注目すべきことは、充電パイルや蓄電システムもDRに参加し、アンシラリーサービス市場から収益を得ている点である。これもまた、エネルギー関連のビジネスにおけるDRの戦略的重要性を示している。DRは、さまざまな種類の負荷リソースに開かれているため、サードパーティの蓄電システム、EV充電プラットフォーム、V2G対応EV、VPPなど、様々な種類の負荷リソースが、市場に正式に登録しなくてもアンシラリーサービス市場から資金を得ることができるのである。この招待モードDRの開放性は、より多くのビジネスチャンスをもたらすだろう。
ビジネスチャンス
このように活発になりつつあるDRがもたらす直接的なビジネスチャンスの1つとして、まず、DRプラットフォームの提供が挙げられる。これまで、多くの民間ソフトウエア企業が、地域の電網会社や政府にDRプラットフォームを提供してきた。これらのDRプラットフォームは、一般に、電力消費者のエネルギー消費に関する政府の監視プラットフォームを基盤に改良されたものである。アグリゲーターやVPPがDRに参加するようになると、その下にあるリソースを制御・最適化するためのプラットフォームも必要になる。このため、ソフトウェア企業は、アグリゲーターやVPPの独自のニーズを満たすことで、副次的プラットフォームというセグメントを探ることができる。
図6は、河北省北部でのVPPの例を示している。この実証事業は、中国で初めてアンシラリーサービス市場を活用し、VPPの下で電力需要家に報酬を与えるという、VPP開発のマイルストーンとなるものである。ABBは、メインプラットフォーム・副次的プラットフォーム、端末装置を含むVPPシステムを提供している。

図6. 国網冀北電力の仮想発電所(VPP)実証事業の概要
出典:(1)ABB. 冀北电力打造虚拟电厂,智慧电网促进节能增效 (2) huamod.2021.7.10. 虚拟电厂与电力市场. (3) NEW. QQ. 2020.8.19. ABB助力国网冀北电力打造虚拟电厂
次に、自律型VPPを指すVPP事業者になることが挙げられる。アグリゲーターとは異なり、VPPは分散型発電装置などより多くの種類のリソースを対象とし、例えば都市単位や省単位など、より大規模なエネルギーリソースを制御することができる。VPP事業者は、リソースを組織する能力を強化する代償として、参加者に仲介手数料を徴収する。こうして、VPP事業者は、マネジメントサービスや、場合によってはアンシラリーサービス市場やスポット市場での取引で利益を得ることができる。中国ではこれまで電網会社の運営による市場型VPPしかなかったが、今後は自律型VPPの登場が予想される。
最後に、3つ目のビジネスチャンスは、V2G技術から来るものである。通常のEVや充電パイルを利用して電力系統に電気を送り返すことで、EV所有者は売電で収益を上げることができる。それに加えて、DRに参加することで、V2G対応のEV所有者は、追加収入を得ることが出来るため、DR参加に対する動機付けが強まる。さらに、EVの充電プラットフォーム事業者においては、追加収入の存在により、V2G対応の充電パイルに対する需要が強化される。
V2G産業はまだ始まったばかりだが、電池の寿命が懸念されるものの、経済的な対価を得たいというEV所有者のニーズは確かに存在する。上海で行われたEVを対象としたDRプロジェクトでは、EV所有者がDRに参加できる時間枠が3つ設定された。スケジュール充電や双方向充電パイル(V2G対応)があれば、EV所有者は電力価格に応じて、最適なタイミングを選び、電力系統への売電や電力コスト削減による利益を最大化することができる。

図7. 上海で実施されたDRの、EV所有者を対象とした3つの時間枠
出典:(1) NRDC. 2020.6.1. 电动汽车与电网互动的商业前景 —上海市需求响应试点案例 研究报告 (2) News.jcrb. 2022.1.24. "充电难"调查:安装充电桩小区电容量不足咋办 (3) H3C. 2020.12.9. 新能源汽车充电桩方案
デマンドレスポンスの仕組み
最後になるが、中国におけるDRの基本的な仕組みについて紹介したいと思う。最初にDRにおける主な関係者(ステークホルダー)を説明し、次に江蘇省の事例で招待モードDRとリアルタイムモードDRのワークフローを解説する。一般的なDRでは、招待の送信プロセスにおいて3つの階層が存在する。

図8. DRにおける主なステークホルダー
出典: (1) Gov. 2017.9.26. 关于深入推进供给侧结构性改革做好新形势下电力需求侧管理工作的通知(2)Shandong gov. 2021.6.4. 关于印发2021年全省电力需求响应 - 山东省能源局
- 管理層では、DRセンターがDRを企画し、中央び給電センター(PDC)や国のDRセンターと連携する。DR中のデータは、最終的にすべてDRセンターに送られる。
- データ交換層では、DSMプラットフォームが下層のプラットフォームに対してDRの指令を出す。通常、民間企業によって提供される副次的DRプラットフォームは、負荷リソースとDSMプラットフォームの間に位置する媒介となる。
- 参加者層では、アグリゲーター、VPP事業者、さまざまな電力需要家がDRの指令を受け、それぞれ応答する。
図8は、招待モードDRでの主なステークホルダーを示したものである。DRを成功させるには、情報交換プラットフォームが不可欠な構成要素であることがわかる。
図9は、江蘇省の事例を示している。他の多くの省と同様、江蘇省にも招待モードとリアルタイムモードの2種類のDRが用意されている。

図9. 江蘇省における招待モードDRのワークフロー

図10. 江蘇省におけるリアルタイムモードDRのワークフロー
出典:(1) MIIT-Jiangsu. 2015.6.15. 《江苏省电力需求响应实施细则》. (2) Yangzhou Gov. 2018.7. 《江苏省电力需求响应实施细则》(修订版)
この2種類のモードでは、DRセンターが鍵となる。招待モードは、より伝統的で確立されたものである。リアルタイムモードは、省内の経済・IT委員会の関与がなく、手順も少ない。一方で、リアルタイムモードは、技術的要求がより高いため、アグリゲーターやVPP事業者などの参加者向けに、より高性能なプラットフォームが必要となる。さらには、包括的なオンラインモニタリング、EMS、データ暗号化機能も求められる。
デマンドレスポンスの規則は省によって異なるため、具体的な事例を慎重に検討することが重要であるが、一般に、DRの普及は、IES企業、デバイスメーカー、システム事業者、そして多くの電力需要家、さらにはサードパーティ蓄電システム事業者や双方向機能を持つV2G対応充電事業者にも収益機会をもたらす。カーボンピークが近づいている今こそ、需要家サイドでの事業化を視野に入れるべき時だろう。
出典:
[1] 北极星电力网,2021-8-30,求涨电价、求改合同!亏损面达100%后,11家发电企业联名呼吁.
[2] Carbon Brief, 2021-9-29, ‘Wave of power curtailment’ expands to 20 provinces across the country, three provinces in the north-west begin to restrict residential electricity”.
[3]北极星售电网,2021-11-5,电价新时代来临!“能涨能跌”机制在多省持续落地!(附电价上涨情况).
[4] NDRC,2021-10-11, 国家发展改革委关于进一步深化燃煤发电上网电价市场化改革的通知.
[5] NDRC, 2021-10-23, 关于组织开展电网企业代理购电工作有关事项的通知.
[6] 北极星售电网, 2021-11-29, 2021年12月29省区市电网企业工商业用户代理购电价格公布!(附电价表).
[7] 北极星售电网, 2021-11-5,电价新时代来临!“能涨能跌”机制在多省持续落地!(附电价上涨情况).
[8] The Lantou Group, 2021-10-15, Measures to Accelerate and Deepen Power Sector Reforms Announced
in China.
[9] 中国人民大学双碳研究院,2022-1,中国人民大学双碳研究院发布 《中国煤电转型成本分析与风险评估》研究报告.
このブログの内容に関する更なる詳細な情報はこちらのレポート:中国の電力市場とグリーン電力取引にて記載しています。こちらのレポートもご参照ください:中国の電力需要家サイドにおける取り組み(DR、VPP、V2G)、 中国におけるスマートグリッドと総合エネルギーサービス。
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