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■ 日付: 2022年6月16日
*こちらの記事は、2022年5月9日の弊社英文ブログ【China’s Renewable Energy: Offshore Wind Takes Off, What Does the Future Hold?】を翻訳したものになります。
【中国の再生可能エネルギー:洋上風力発電が本格始動、その行方は?】
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まとめ
1.中国における再生可能エネルギーにおける供給と需要の地理的ミスマッチは、沿岸地域のカーボンニュートラル化の進展を懸念させるが、洋上風力発電はその解決策のひとつとなり得る。
2.2021年の洋上風力発電の急拡大は、国の補助金の取り消しによる駆け込みによるところが大きかったが、補助金の取り消しにもかかわらず洋上風力発電の成長が堅調に伸び続ける理由はいくつかあり、政策シグナルと海上の豊富な洋上風力発電における潜在資源が大きな理由に当たる。
3.ただし、課題も存在する、コストが主な障壁であることに変わりはない。建設用船舶のレンタルや海底電力ケーブルの敷設にかかる建設コストの高騰、運用・メンテナンスコストの高騰は短期的には継続すると思われる。
4.しかし、課題の裏側には大きなチャンスがある。浮体式洋上風力発電のような新しい技術や、洋上風力発電と石油採掘や水素製造とのシナジー効果が注視される。
キーワード:#再生可能エネルギー #洋上風力発電 #第14次5カ年計画 #クリーンエネルギー基地(CEB) #海底ケーブル #船舶 #浮体式洋上風力 #スマート風力タービン #グリーン水素
この記事の内容にご関心のある方は、こちらのレポートもご参照ください。:【2022年中国の風力発電産業】、【2022年中国の風力発電・太陽光発電における政策】
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はじめに
中国は、この10年間、再生可能エネルギー(再エネ)を積極的に拡大し続けている。2021年末までに、中国は世界全体の再エネ発電導入量(3,064GW)の35%を占めており、風力発電は328GW、太陽光発電は306GW、水力発電は391GWと、世界最大の再エネ発電設備を保有している。国家エネルギー局(NEA)によると、2021年には中国の再エネ導入量の合計は1,063GWを超え、中国の総発電容量の44.8%を占め、2015年より10.2%増加した。
この中国における再生可能エネルギーの急速な拡大は、中国の再生可能エネルギー開発の決定要因を理解し、将来への示唆を得る上で大きな意義がある。本稿では、まず中国の再生可能エネルギー政策全体を簡単に概観し、次に急拡大する洋上風力発電を中心に、潜在的な課題と新たなビジネスチャンスを考察する。
中国における再生可能エネルギーの地理的ミスマッチ
中国はこれまで、再生可能エネルギー開発に関連する数々の政策を発表してきた。2021年に発表された第14次5カ年計画では、エネルギー分野における気候変動への取り組みを中心的な政策テーマとして掲げている。地理的な観点からは、中国はエネルギー開発のカギとなる9つの大規模なマルチエネルギー相互補完クリーンエネルギー基地(CEB)と4つの洋上風力基地を建設する意向を表明している。主要プロジェクトの地理的分布は以下の地図に示す通りである。

図1:中国の第14次5カ年計画におけるCEB、洋上風力、原子力発電の分布
図1が示すように、再生可能エネルギー資源と需要地には地理的なミスマッチがある。中国で最も豊富な風力・太陽光資源は北部と北西部にあるが、電力需要が高い地域は主に南東部である。再生可能エネルギー資源の不足もあり、南東部、特に東海岸地域は、政府のカーボンニュートラル計画において特に重要な地域となっている。それを解決するためには、超高圧(UHV)送電線と、省間グリーン電力市場の整備が不可欠である。(UHVによるスマートグリッドに関する記事「中国のスマートグリッドにみる電力業界の未来」;電力市場取引に関する記事「中国のグリーン電力パイロット交易プログラムが中国電力取引市場にもたらす変化とは」もあわせてご参照ください。)
しかし、この2つだけでは問題を解決することはできない。第一に、グリーン電力市場の構築はまだ初期段階であり、発展には時間がかかる。現状では、依然として省内の電力取引が全体の82%を占めている。省間の再生可能エネルギーの電力取引は、電力取引全体の約4%に過ぎない(下図2参照)。これは、長距離送電のコストが高いこと、アンシラリーサービスの責任が不明確で、見えないコストを上乗せされる可能性があること、電力系統以外の事業者の参入余地が小さいことなどが一因である。

図2:2020年中国国内の電力市場取引
第二に、中国における省間の電力取引は、未だ発展途上の段階で、ボトルネックに直面している。地方政府と送電網会社の利益が一致しないため、省間の電力取引量は限られている。これには、地域のパワーバランスを維持することへの懸念、地域の発電事業者を優先すること、電力の地産地消を優先することなどが含まれる。(省間の電力取引について詳しくは、記事「中国のグリーン電力パイロット交易プログラムが中国電力取引市場にもたらす変化とは」をご参照ください。)
そのため、中央政府は東部沿岸地域での多様なエネルギー開発を重視している。主なソリューションとしては、原子力(小型モジュール炉(SMR)、高温ガス炉(HTGR)、浮体式原子力発電所パイロットプロジェクト)、分散型太陽光発電(BIPVなど)、洋上風力発電がある。原子炉は大量の冷却水を必要とするため、沿岸地域が適している。また、分散型太陽光発電は、土地資源が限られた工業地帯での利用に適している。第14次5カ年計画では、2025年までに原子力発電所10基、洋上風力発電所9基の建設が決定している。
中国で急拡大する洋上風力発電
数十年にわたる開発の結果、陸上風力は飽和状態に近づき、利用可能な場所が少なくなり、棄風が増えている。2021年の陸上風力発電設備の新規導入量は、2020年の69GWから30.67GWと約55%減少した。しかし、同時に洋上風力発電の導入量は前年比4.5倍と急増した。

図3:2014-2021年陸上・洋上風力発電設備の新規導入量(GW)
洋上風力発電の主要開発省の多くが、今後5年間の導入目標を掲げている(下図4参照)。発表された導入目標の総量は70GWを超えている。また、一部の省は長期的な計画を発表している。例えば、山東省は2030年までに35GWの洋上風力発電の建設を目指しており、そのうち10GWは第14次5カ年計画期間中に開始される。広東省、江蘇省、福建省、広西省は、中国の洋上風力産業における重要な開発省であり、計画導入量は10GW以上である。福建省政府は導入目標を発表していないが、福建省の漳州という都市は、50GWの洋上風力産業基地計画を公表している。承認されれば、2025年から年間5-10GW導入を導入する事業が開始される。

図4:2025年までの洋上風力発電の省別導入目標 (発表した省のみ)
洋上風力発電が急拡大している理由
前述の通り、洋上風力発電は中国沿岸部においてカーボンニュートラルを実現するための重要な手段の一つである。長い送電線を建設することなく、かつグリーン電力市場の成熟を待たずして、沿岸部の逼迫する電力使用に対応することができる。(グリーン電力市場については、記事「中国のグリーン電力パイロット交易プログラムが中国電力取引市場にもたらす変化とは」をご参照ください。)
それに加えて、海上は陸上よりも風況が良く、風速が20%程度速いだけでなく、風の乱れが少なく、安定しているため、変動が少ない。図5から、中国では沿岸部のほとんどが低風速地域(風速7m/s以下)であるため、沿岸部自体が陸上風力発電の開発に最適な地域とは言えないが、風速の速い洋上風力発電の開発に適していることがわかる。さらに、洋上風力発電所建設における部材はトラックではなく船舶で輸送されるため、より大型で高出力なタービンを容易に輸送・建設することができる。洋上風力発電は、地域の土地資源を圧迫しないため、より大規模な建設が可能であることは言うまでもない。したがって、洋上風力発電は、より多くのエネルギーを生み出すことができる。

図5:中国の風速分布
図6:MingYang(明陽智能)の16MW洋上風力発電タービン(翼長118m)
中国では、風力発電タービンの大手サプライヤーがすでに洋上風力発電事業に参入している。Mingyang(明陽智能)やCSSC(中国海装)などの国内企業は、近年、超大型洋上風力発電タービンの開発に精力的に取り組んでいる。昨年から10MW級の洋上風力発電タービンの量産を開始した。2021年、Mingyangは世界最大のハイブリッド駆動洋上風力発電タービンと言われるMySE 16.0-24(16MW)を発表した。

図7:Longyuan(龍源電力集団)の洋上風車設置船
Siemens Gamesaなどの中国における外資系プレイヤーは、天津の製造拠点での陸上風力発電タービンの中国現地販売を中止し、今後は洋上風力発電事業のみに注力するとしている。2021年にはSiemens Gamesaが自社の洋上風力発電のダイレクトドライブ技術(11MW DD)におけるライセンスをUnited Power(聯合動力)に供与し、このライセンス供与ビジネスモデルを通じてまた新たな一歩を踏み出した。
中国における洋上風力発電の課題
2021年に中国の洋上風力発電が急拡大したが(前述)、その大きな理由の1つは、国からの補助金が打ち切られるれることが決まり、2021年末には「建設競争」となっていたためである。現在、中国の洋上風力産業は、陸上風力発電のように成熟するまでには、まだいくつかの課題を抱えている。主な課題を以下に挙げる。
1) 建設コストの上昇
中国における洋上風力発電プロジェクトの建設コストは、近年約2,000元/kw上昇している。現在、洋上風力発電の建設コストは陸上風力発電の約2〜3倍である。陸上風力発電所の資本コストは平均で約6000人民元/kwであるのに対し、洋上風力発電のコストは約13,000〜15,000元/kwである。これは、現在小規模な洋上風力発電プロジェクトの完成、建設用船舶の不足、建設の経験不足、海底電力ケーブルの建設コストが高いことなどが主な原因である。これらの要因のうち、建設用船舶の不足と海底ケーブルの敷設の困難さがカギとなる。
洋上風力発電施設の建設用船舶の供給不足
洋上風力発電プロジェクトの建設ラッシュを受け、洋上風力発電の建設用船舶とO&M用船舶の需要が高まっている。現在、中国には約40隻の洋上風力発電建設用船舶がある。1隻の船舶(タービン40基)の平均年間稼働数から計算すると、理論上は年間最大1,600基のタービンを稼働することが可能である。しかし、異常気象や海面上昇などの様々な要因が重なると、この数字を達成することは困難である。上記で発表された洋上風力発電の省別導入目標(78GW)がすべて達成されるためには、洋上風力発電タービン1基の発電量が7MWであると仮定すると、年間55隻でタービン2,228基を建設する必要がある。ましてや中国では、6MW以上の洋上風力発電タービンを建設できる船舶は20隻程度に過ぎない。
洋上風力発電の建設用船舶の建設コストが高く、建設期間が長いため、船舶の供給が制約されると洋上風力発電プロジェクトの進捗が遅れる。今後5年間において、建設用船舶が、この分野のボトルネックになるかもしれない。業界の専門家である、龍源振華研究院院長の馮小星氏によると、近年、船舶1隻のレンタル料が月400万人民元から月1,000万人民元に急騰している。現在、中国の船舶はすべて予約で埋まっており、最も早く予約が取れるのは2024年頃になるという。
海底電力ケーブルの建設コストが高い
これまで洋上風力発電では、HVAC(高圧交流送電)とHVDC(高圧直流送電)という2種類の海底ケーブルが採用されてきた。現在、中国の洋上風力発電プロジェクトの多くは、「交流35kv海底アレイケーブル+交流220kv長尺海底ケーブル」の組み合わせでHVAC技術を適用している。その仕組みを簡単に説明すると、風力発電タービン同士をつなぐ35kvのアレイケーブルは、まず風力タービンで発電された電力を海上の昇圧所(変電所)に送電する。そして変電所では、220kvの高圧電流に変換して陸上へ送る。

図8:洋上風力発電の送電
海底ケーブルの建設費は1,500人民元/kw程度で、合計すると投資額全体の10%程度を占める。送電とペアリングする昇圧所の建設コストと合わせると、さらに3〜5%のコストアップになる可能性がある。海中は陸上よりも条件が厳しいため、浸食、海水の浸入、潮の干満、嵐などによるケーブルの損傷を防ぐことが技術的に困難である。このように海底ケーブル分野では技術参入障壁が高いため、サプライヤーは限られている。市場シェアは主にZhongtian Technology (中天科技)、Orient Cables (東方電纜)、Hengtong (亨通光電)、Henhe Cable (漢纜股份)、Baosheng Cable (宝勝股份)の上位5社に集中している。また、ケーブルの供給も限られており、新しいケーブルの調達には2年、あるいはそれ以上かかることもある。さらに、建設の障壁もある。熟練した人材やケーブル敷設用の特殊な船舶はまだ不足している。この2つの要因により、コストが大幅に増加し、洋上風力発電プロジェクトに不確実性が生じている。長い調達期間は、ケーブルの修理が発電所の長期的性能に与える追加的なリスクとなる。ケーブルコストを削減するための重要な解決策の一つが、発電所(タービン)の大型化である。発電所の数が減れば、アレイケーブルの本数も減り、その分、設置やメンテナンスの範囲も縮小される。

図9:江蘇省における洋上風力発電プロジェクトCAPEXの内訳
出典:China Renewable Energy Engineering Institute, Pingan Securities
2)運用・保守コストの高騰
陸上風力発電プロジェクトが15〜20%程度であるのに対し、洋上風力発電プロジェクトのO&Mコストは均等化発電原価(LCOE)の25%程度を占めている。O&Mコストが高くなる主な理由は、海へのアクセスが悪く、物流・輸送コストが高いためである。また、台風などの悪天候や潮位上昇により、運用や保守作業ができない。そのため、1年のうちで船舶が運航できる期間は限られている。中国ではO&M用船舶が不足しており、洋上風力発電プロジェクトのO&Mコスト約20%がO&M船のレンタル料で占められている。

図10:江西省洋上風力発電プロジェクトOPEXの内訳
出典:Mingyang's report ("Technology innovation in reducing O&M costs of offshore wind 海上风电运维平价技术创新之路")
このようにO&Mコストが高いことから、10MW以上の大型洋上風力発電タービンや、船舶の運航頻度を減らすためのデジタル化などの技術開発が急務となっている。
3)環境・生態系への影響
これまでのところ、中国の洋上風力発電プロジェクトのほとんどは、水深35m未満の近海沖合で操業している。しかし、この浅い海域には多くの海洋動物や植物が生息している。洋上風力発電プロジェクトが引き起こす可能性のある主な生態系被害には、以下のようなものがある。
1.騒音。風力タービンの建設・稼働中に発生する水中騒音は、魚の餌場や産卵場所に悪影響を与えたり、回遊経路を分断させたりする可能性がある。
2.水質汚染。船舶交通の増加による汚染は、水質を汚染し、底生生物、遠洋生物の生息環境を悪化させ、サンゴ礁などの植物にダメージを与える可能性がある。
3.鳥類やコウモリへの被害。洋上風力発電は、鳥の餌場や移動経路を妨げたり、生息地を破壊したり、衝突したりすることで、鳥に害を与える可能性がある。
1)浮体式洋上風力発電
浮体式洋上風力発電タービンは、海底に固定された構造物ではなく、海の上に浮かべた構造物の上に建設される。これにより、風況の良い沖合(世界の洋上風力資源の8割は遠洋にある)に大型タービンを配備する道が開かれることになる。現在、中国ではまだ実証実験の段階だが、浮体式洋上風力発電の技術が成熟すれば、構造が単純なため建設コストを削減でき、海洋生物の生息地からも遠く離れているため生態系へのダメージが少ないなどの利点があるとされている。
浮体式洋上風力発電は、コストが最大の課題である。LCOEは、船底が固定されている洋上風力発電プロジェクトと比べて約4倍も高い。これは、現在のタービンモジュールが小型であること、技術やサプライチェーンが未熟であることが主な原因だと考えられる。将来的に規模が拡大すれば、コストは大幅に削減されるだろう。GWECの2021年世界洋上風力に関する報告書を参照すると、浮体式洋上風力発電のLCOEは2035年には17%、2050年には40%下がる可能性がある。
コスト以外にも、技術的な障壁や不十分な政策的支援もこの技術の実用化を阻んでいる。技術的なボトルネックは、高電圧ダイナミックケーブル、係留・固定システム、プラットフォームの大きさなどが挙げられる。また、補助金制度がまだないため、開発業者や個人投資家からの市場参入が期待できない。
しかし、3〜4年前に、実現は難しいと思われた計画は、中国では現実のものとなっている。Mingyang、CSSC、そしてCTG(中国三峡)のような大手国営企業などの業界大手は、すでに浮体式洋上風力発電タービンの製造を開始している。2021年、CTGの「三峡引領号」プロジェクトは、Mingyang製の台風に強いタービンで構成され、広東省陽江の電力系統に接続することに成功した。これは、中国初の浮体式洋上風力発電プロジェクトと言われている。同年、CSSCも広東省で6.2MWの浮体式洋上風力発電プロジェクトを完成させた。その他にもいくつかのプロジェクトが計画中である。このことから、この技術は未熟であるものの、将来的に採用が進むと予想される。

図11:2021年に広東省で実施されたCTGの5.5MW浮体式洋上風力発電プロジェクト
2)スマート風力タービンとウインドファーム (集合型風力発電所)
スマート風力タービンとは、IoTやAIなどのデジタル化技術を搭載した風力発電機のことで、通常は、現地でのリアルタイム機器監視、故障警報、クラスタ制御などの機能が搭載されている。スマート風力タービンは、2つの点でコスト削減につながる。
まず、運用・メンテナンスコストの削減。 デジタル化により、仮定に基づく通常の予防保全の代わりに予知保全が可能になる。タービンの様々な部品にセンサーを取り付けることで、1カ月先の故障を予測することができる。これにより、事業者は修理用部品を調達したり、必要な船舶をより良い料金で予約したりすることができることになるだろう。最も重要なことは、タービンが長期間稼働することを保証し、不必要な現地視察を最小限に抑えることである。
次に、業務効率化による運用コストの削減。風力発電は、他の再生可能エネルギーと同様、出力が変動し、安定しない。デジタル化により、風況を予測することでタービンのパフォーマンスを向上させ、より良い稼働スケジュールを実現することができる。今後、グリーン電力市場で取引を行う場合、価格予測が重要になる。デジタル化により、風力発電の出力を高い精度で予測し、利益を最大化することができる。

図12:EnvisionのEnOS™ IoT技術を活用したデジタルプラットフォーム
今後、ビッグデータがますます重要な役割を果たすようになると、陸上風力発電、洋上風力発電、分散型風力発電のいずれにおいても、スマート風力タービンは必要な設備となるだろう。Goldwind、Envision、Mingyangなどのトッププレイヤーは、いずれもスマート風力タービンとデジタルプラットフォームを開発している。例えば、Envisionのスマート風力プラットフォームは、風速予測、リアルタイム機器監視、トラブルシューティングなどを提供する。
3)他産業とのシナジー効果
他の産業と提携することで、建設コストを削減できる可能性がある。現在、洋上風力発電と水素製造会社や石油会社との組み合わせが考えられている。
洋上風力発電と水素製造
風の予測不可能性は、棄風の問題を引き起こす。過剰な風を利用して水素を製造することで、棄風の問題を解決し、カーボンニュートラル達成のための重要な資源であるグリーン水素を製造することができる。特に洋上風力は、海上で乱流が少ないため、陸上風力よりもはるかに安定した水素製造が可能であることから、有望視されている。また、電力需要の多い沿岸部では、水素ステーションの設置が多く計画されている。生産拠点に近ければ、送電・輸送コストも少なくて済む。現在、このシナジーの大きなボトルネックのひとつは、製造した水素を陸上まで戻す輸送にあるが、既存のパイプラインを使って水素を輸送できれば、コストを大幅に削減することができる。(グリーン水素については、記事「中国でグリーン水素への道を拓く:水電解装置メーカーの取り組み」をご参照ください。)

図13:洋上風力発電による水素製造の仕組み
中国では、福建省、広東省、浙江省などの沿岸都市が、水素製造を伴う洋上風力発電事業を省の第14次5カ年計画の主要開発部門に位置づけている。
洋上風力発電と石油生産
石油会社や天然ガス会社の洋上における建設・設置の経験は、洋上風力発電設備の建設に容易に応用できる。石油掘削プラットフォームや船舶のような設備の一部も洋上風力発電プロジェクトに利用することができる。前項で述べたように、熟練した人材や建設用船舶は、まさに現在の洋上風力発電事業に不足しているものであり、両者の提携が望まれているのは間違いないだろう。
同時に、石油会社にとっては、二酸化炭素排出量を削減する大きなチャンスでもある。中国最大の海洋石油・ガス掘削会社であるChina National Oil Corp (中国海油)は、風力、太陽光、CCUSなどの再生可能エネルギー関連技術を開発する子会社を設立した。2021年、江蘇省にある同社初の300MW洋上風力発電プロジェクトが稼働に成功した。

図14:China National Oil Corp (中国海油)、江蘇省に洋上風力発電タービンを設置
上図は、China National Oil Corpが江蘇省で行った初の洋上風力発電プロジェクトである。国内トップの海洋石油・ガス掘削会社が、掘削プラットフォームを洋上風力発電の建設・据付プラットフォームに転用した一例である。
出典
[1] 国务院, 2022-1-29, 国家能源局举行新闻发布会发布2021年可再生能源并网运行情况等并答问.
[2] Global Wind Atlas.
[3] 中国能源网,2022-4-7,8省规划超150GW,海上风电将迎来爆发式增长!
[4] 财通社,2021-11-4,福建漳州市50GW海上风电大基地规划出台,海上风电迎机遇.
[5] Harvard Business School Belfer Center, 2017, The Challenges and Promises of Greening China's Economy.
[6] 北极星风力发电网,2021-1,月租千万!海上风电安装船“身价”暴涨.
[7] GWEC, Global offshore wind report 2021
[8] NS Energy, 2022-2, A benefit for the wind industry: How digitalisation can save time and money
[9] 氢云链,2020,氢云观察:中国新增装机量世界第一,海上风电制氢能否引领应用新思路?
[10] 平安证券,2022-1,海上风电之海缆:需求高增、格局清晰,优质成长赛道.
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