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 ■ 日付: 2022年8月16日
*こちらの記事は、2022年7月27日の弊社英文ブログChina's Emissions Trading: The Opportunities Aheadを翻訳したものになります。
【中国における排出権取引制度:どのようなビジネスチャンスが考えられるのか
この記事の筆者
 
まとめ
1. 国内外の金融投資家は一時的に中国の全国炭素排出権取引制度から除外されているが、近い将来に参入できると考えられている
 
2. 中国炭素市場フォーラム(China Carbon Forum)の推定によると、金融投資家が関与し、デリバティブ商品が取り入れられると、中国の炭素市場はさらに拡大し、CEAの価格は現在の49人民元/トンから2030年までに約93人民元/トンに上昇すると見積もられている。CCERについても同様の傾向が予想される。
 
3. CCERプログラムの再開を見据え、中国でのビジネスチャンスを模索している参加者にとって、世界のボランタリークレジット市場は、クレジット発行プロジェクトのタイプ、カーボンオフセットビジネスモデル、スコープ3における排出量の削減戦略などの面で、参考できる貴重な情報をしてくれる。
 
4. 今後、中国の炭素市場において、カーボンニュートラルの目標に合わせ、CCUS、水素貯蔵、商用燃料電池車などの最先端技術を推進する新たなプロジェクトが対象範囲になってくるだろう。企業レベルを超えて最終消費者までたどり着く革新的なモデルが、注目すべき新たな動きとなるだろう。
 
このブログの内容に関する更なる詳細な情報はこちらのレポート:【中国の炭素排出権取引制度にて記載しています。
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中国の全国炭素排出権取引制度(ETS)は2021年7月16日の発足から1年を迎えた。1年前、中国のETSは10年間の準備期間を経て正式に運用段階に入り、世界最大の炭素市場となった。この待望のETSの創設は、2002年以来、国連のクリーン開発メカニズム(CDM)への関与を皮切りに、9省・市の炭素排出権パイロット事業の立ち上げ、そして全国統一炭素排出権取引市場の構築に至るまで、幾多の段階を経てきた。ただ、これは国内外に大きなチャンスをもたらす新興市場の最初の一歩に過ぎない。
 
この記事では、中国全国炭素排出権取引制度の主要な要素を説明しつつ、ボランタリークレジット市場を詳しく考察することで、潜在的なビジネスモデルを分析し、今後のチャンスを見つけるを目指している。
 
初年度のパフォーマンススナップショット 
はじめに、初年度の全国炭素排出権取引制度について簡単に振り返ってみたい。いくつかの特徴をまとめることができる。
図1:全国炭素排出権取引制度の運用初年度の1日あたりの取引高と終値の推移
 
  • 駆け込み購入
多くの取引は実施期間の終了間際に行われ、それが取引活動全体の約75%を占めた。市場参加者の90%は新規参入者であ利、その多くは準備不足で、排出権取引における日常的な戦略をまだ確立していないことが窺える。
 
また、10月から11月にかけて排出枠の配分調整が行われ、その時点でようやく排出割当量が正式に確定される。このため、ETSの対象事業者がコンプライアンス(数値目標等を遵守すること)対策の準備や取引完了までに残された期間は、わずか2ヶ月足らずであった。
 
  • 低い取引率
全国ETSの取引率は3%程度であり、総割当量の3%しか市場で取引されていないことになる。一方、世界で最も成熟したETSであるEU域内排出権取引制度(EU ETS)では、取引率は初期の4.09%から現在の417%に上昇している。
 
  • 低い取引価格
中国における、現在の限界削減費用(温室効果ガスの排出量を追加的に1トン削減するために必要なコスト)は約7ドル(約49人民元)で、ETSの取引価格より若干高い。取引価格が比較的低い場合、排出事業者のオペレーションにあまり影響を与えず、排出削減へのインセンティブの低下が懸念される。市場が成熟するにつれ、取引価格は上昇することが期待される。
 
上記3つの特徴から、中国の全国ETSが抱える問題点として、市場参加者の多様性の欠如、取引商品の制限、コンプライアンス市場とボランタリー市場の不均衡な発展などが挙げられる。これらの要員の一つとして、「中国的な特徴」を持つ規制や市場設計に基づいて、ETSが運用されていることがあると考えられる。
 
中国の全国炭素排出権取引制度の主な構成要素
中国全国ETS市場は、コンプライアンス市場とボランタリー市場で構成されている。コンプライアンス市場は、国のETS管理者である中国生態環境部(MEE)とその地方当局により、市場参入基準、排出枠の割り当て、コンプライアンス規程などの面で高度な規制が行われている。一方、ボランタリー市場は比較的柔軟で、コンプライアンス市場の支援システムとして機能する。
 
コンプライアンス市場における市場参加者と取引商品:
現段階では、重点排出事業者のみが取引口座を開設し、炭素排出枠(CEA)のスポット取引を行うことができる。CEA1単位で、事業者は1トンの二酸化炭素または同等の量の他の温室効果ガスを排出する権利が与えられる。金融機関や個人投資家などその他の国内外の市場参加者は、CEA取引から一時的に除外されている。先物などのデリバティブ取引もまだ含まれておらず、全国ETSで取引される前に国務院の認可が必要である。
 
市場参入の制限は、政府が無秩序な投機行動を避けるために着実かつ円滑な開発アプローチをとることを好むことから、主にリスク管理と安定した市場運営を考慮して設定されたものである。一方で、炭素排出権(すわなちCEA)の法的属性は、未だ不明確であり、さらに明確にする必要がある。金融機関の関与やデリバティブ商品の追加は、政策立案者の立場からすると、初期段階での事態をさらに複雑化させる可能性がある。
 
しかし、金融投資家の市場参入を阻むことは、必然的に市場の流動性を低下させる。金融投資家は投資家としての性格上、排出事業者よりも取引頻度が高く、リスクも負うため、市場取引を活性化する上で重要な役割を担っている。炭素市場の健全な発展を保障するために、金融投資家への規制はあくまで初期段階での一時的なアプローチであることが予想される。市場が順調に軌道に乗れば、規制は解除され、国内外の金融投資家が炭素市場で、その役割を果たすようになるだろう。また、炭素市場にデリバティブ商品を導入することで、価格変動のリスクを効果的に低減し、市場の流動性を高めることができる。
 
重点排出事業者のセクターと排出基準値:
現在の対象セクターは、中国のCO2排出量の40%、世界のCO2排出量の7分の1を占める電力セクター(熱電併給、他セクターの自家発電を含む)のみに限定されている。また、重点排出事業者の排出基準値は、2013年から2019年までのいずれかの年において、年間排出量が26,000トンCO2である。(基準値を超えた事業者が対象)
 
図2:2020年の中国の二酸化炭素排出量 (セクター別)
 
コンプライアンス市場の全事業者数は、第一期で2,162事業者であり、そのほとんどが石炭火力発電所であった。2025年までには、石油化学、化学、建材、鉄鋼、非鉄金属、製紙、国内航空の7つの高排出量セクターを対象として順次拡大していく。セメントと非鉄金属セクターは当初2022年に全国ETSに含まれる予定だったが、排出量データの品質の問題から、セメントとアルミニウムセクターへの拡大は2023年まで遅れるかもしれない。
 
排出権取引プラットフォーム:
コンプライアンス市場とボランタリー市場の2つの市場は、全国ETSの異なる排出権取引プラットフォームで並行して運営される。コンプライアンス市場の取引は、上海環境エネルギー取引所(取引を担当)および中国湖北省排出権取引所(登録・決済を担当)で行われる。ボランタリー市場の取引は、地方排出権取引所(北京、天津、上海、重慶、広東、湖北、深圳、福建、四川の各取引所)のいずれかで行われる。
 
市場メカニズム、コンプライアンス市場とボランタリー市場の関連性:
コンプライアンス市場では、割り当てられた排出枠を超えた重点排出事業者が、排出枠を下回った他の排出事業者からCEAを購入しなければならない。CEAは転売可能であるが、排出枠よりも実際の排出量が少ない重点排出事業者は、市場でCEAを売却せず、リスクマネジメントの目的で自社で保有する傾向がある。投資家の関与がないことも考えると、市場の取引率はさらに低くなる。
 
一方、ボランタリー市場は、排出量を相殺(オフセット)するためにカーボンクレジットを自主的に購入する最終購入者(通常は持続可能性を重視する企業)、排出削減プロジェクトを展開するカーボンクレジット発行者(プロジェクト開発者など)、仲介者(投資家、取引業者、小売業者など)を中心に、多様な参加者を対象としている。
 
CCER(中国認証排出削減量)は、中国のボランタリー市場の主要な商品である。CCERはプロジェクト単位で発行され、各プロジェクトはCCER発行前に国家管理者による承認と認証を受けなければならない。
 
実際の排出量が排出枠を超えた重点排出事業者は、CEAを購入する以外に、総排出枠の5%を上限として、CCERを購入して、排出量をオフセット(相殺)することができる。北京グリーン取引所によると、現在、CCERには有効期限がなく、何年も前に実施されたプロジェクトが発行したCCERも、国の管理者が認証したカーボンクレジットであれば、現在もオフセットに使用する上で、有効であるということである。
 
中国本土で企業法人として登録し、各省・市の炭素排出権パイロット事業の市場参入基準を満たす国内外の自主的な参加者は、CCER取引口座を開設し、全国ETSのボランタリー市場に参加する資格がある。
 
図3:中国全国炭素排出権取引制度の市場メカニズム
 
中国のボランタリークレジット市場:「CCER(中国認証排出削減量)」プログラムの概要
中国国内のコンプライアンス市場はすでに軌道に乗っているが、ボランタリー市場は期待されたほど順調に発展していない。
 
2017年3月、市場業績が低迷し、クレジット発行の標準化が進んでいないことを理由にCCERの申請登録が停止され、再開は追って発表されるまでは未定であった。全国ETSが開始されて以来、CCERプログラムを再開する声が高まっているが、正式なスケジュールは今のところ示されていない。しかし、この機会を逃さないためにも、CCERについて詳しく調べてみる価値がありそうだ。
 
CCERプロジェクトの分類
現在、取引可能なCCERは、すべて停止前に承認を受けたプロジェクトが発行している。従来の基準によると、2005年2月16日以降に中国で建設が開始されたプロジェクトで、以下の4つのカテゴリーのいずれかに該当するものが申請の対象となっていた。
 
図4:CCERプロジェクトの分類
 
簡単に言えば、タイプ1以外の3つのタイプは、すべてCDMから転換されたプロジェクトで、CDMの「残り物」のようなものである。中国は、かつて、CDMのカーボンクレジットであるCER(認証排出削減量)の最大供給国だった。しかし、EU ETSが2013年以降、後発開発途上国のプロジェクトが発行したクレジットしか認めないことを規定したことから、中国のCDMプロジェクト数は激減し、近年はCDMに登録されているプロジェクトはほぼゼロである。
 
このような状況から、現在の市場におけるCCERの多くはタイプ1プロジェクト(NDRCが承認した手法で開発されたプロジェクト)が発行しており、CCERプログラムが再開されれば、このタイプが主流となることが考えられる。現在までに、200のCCERメソドロジーがあり、そのうち173はCDMのメソドロジーを参考に作成され、27はプロジェクト開発者や第三者によって提案・追加されたものである。CDMから転用されたものが多いが、これらのメソドロジーが最新のものでないことも重要な問題である。最先端のカーボンニュートラル技術(CCUS、水素貯蔵など)はまだ新しいメソドロジーが確立されておらず、これらの新しいメソドロジーの提案者が先行者利益を得て、その分野で業界標準を形成する上で主導権を握る可能性が高い。
 
追加性 - CCERプロジェクトの適格性における重要な基準
メソドロジーとは、プロジェクトが本当に排出量の削減につながるかどうかを評価するための基準である。このメソドロジーは、プロジェクトのベースライン、追加性、削減モニタリング計画、排出削減量の推定という4つの側面から構成されているが、このうち追加性は、CCER発行が認められるか否かを判断する上で、重要な要素となっていた(今後もそうなると考えられる)。
図5:プロジェクトの追加性は、CCER発行が認められるか否かを決定する重要な要素である
 
追加性とは、基本的には、CCER発行・販売することで資金を獲得し、それがあるからこそ、プロジェクトが存在できることを意味する。もし排出削減プロジェクトがCCERの収入なしで財政的に持続可能であれば、プロジェクトの追加的な排出削減効果はなく、したがって適格性を満たさないことになる。(つまり、収益性の高いプロジェクトは対象から外れる可能性がある。)
 
追加性の評価には、業界の内部収益率(IRR)をベンチマークとする方法が一般的である。国営の国家電力総公司(2002年の国家電力セクター改革前の電力セクターの最高管理機関)が2002年に発表した「電力工学技術革新事業の経済性評価に関する暫定措置法(試行)」によると、電力セクターのIRRは投資総額の8%と設定されている。CCER発行前の推定IRRが8%を下回るプロジェクトについては、CCERによる資金提供がなければ存続できないほど財政的に魅力がないことを証明でき、プロジェクトに追加性があるといえる。
 
CCERプログラムが再開する場合、追加性の基準について問題が提起されている。業界の基準IRRは20年近く変更されておらず、8%というベンチマークが実態を表すことができる現実的な数字かどうかは、当時このベンチマークがどのように導き出されたかの詳細が不明なので明言は避ける。しかし、中国の電力業界は劇的に変化し、石炭火力の市場改革(詳細は中国、電力価格の上限を引き上げ:変更点と業界への影響)や、再生エネルギーのグリッドパリティプロジェクトの開始など、一連の改革を経験している。(また、以前はできなかったグリーン電力証書も発行できる様になっている。)以前、追加性を実証し、CCERを発行したプロジェクトの多くは、長年の開発を通じてすでに財政的に持続可能であり、現在では追加性の基準を満たすことができなくなっている可能性が高い。
 
追加性とCCERの基本的な考え方は、カーボンニュートラル達成に最も必要なプロジェクト(CCUS、水素貯蔵、商用燃料電池車、水素還元方など)に資本や技術サポートなどの資源をよりよく配分することである。CCERがカーボンニュートラルの目標に合わせ、こうした最先端技術をより良く支援するように調整されることは合理的であろう。
 
すでに先行者利益を得るために行動を起こしている主要プレイヤーもいる。例えば、美錦能源(Meijin Energy)の子会社で華南地区最大の商用燃料電池車メーカーである飛馳汽車(Feichi Vehicle)は、燃料電池車のデータ管理ソフトウェアを提供する青山科技(Qingshan Technology)、第三者検証機関の中国船級社品質認証(China Classification Society Certification)と、2021年6月に中国初の水素燃料電池車CO2排出量算定方法を共同開発する契約を締結している。このメソドロジーが発表されれば、近い将来、燃料電池車がカーボンクレジットを発行し、そのクレジットを炭素市場で取引する道が開かれるはずだ。
 
最新の情報によると、美錦能源アセットマネジメント(美錦能源の別子会社)と青山科技は、燃料電池車の排出削減量のモニタリング方法に関する特許を取得し、燃料電池車セクターでの包括的メソッドの開発に向けて確実な一歩を踏み出した。
 
世界のボランタリークレジット市場:Verified Carbon Standard (VCS) プログラムの概要
CCERプログラムの再開を見据え、中国での潜在的なビジネスチャンスを求めている参加者にとって、世界のボランタリークレジット市場は、将来の戦略とビジネスモデルの観点から貴重な参考リソースとなる。国際市場における代表的なプログラムとして、The Climate Group、国際排出権取引協会(IETA)、世界経済フォーラム(World Economic Forum)、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)が創設する非営利プログラムのVerified Carbon Standard(VCS)が挙げられる。現在、世界で1,806件以上、中国では345件のプロジェクトがVCS認証されており、最も広く利用されているボランタリーCO2オフセット・プログラムである。
図5:VCS市場メカニズムの概要
 
中国におけるVCSプロジェクトの適格性 
VCSの認証を受けたプロジェクトには、再生可能エネルギーから林業まで、さまざまなものが含まれている。風力発電と水力発電を合わせると、中国全体のプロジェクトの60%以上を占めている。実際、中国のVCSプロジェクトは、CDMプロジェクト(CER発行プロジェクト)と類似しており、多くのVCSプロジェクトが以前は中国でCDMプロジェクトとして登録されていたが、CDM市場が縮小したため、これらのプロジェクトがVCSの下でクレジットを発行するようになったという背景がある。
 
図6:中国に所在する登録済みのCDMプロジェクトとVCS認証プロジェクト比較 
 
VCSの認証を受けるには、新規開発プロジェクトが、再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力、バイオマス、地熱)、植林によるカーボンシンク、CCS、鉱業・鉱物生産、家畜・糞尿管理など、16セクターのスコープのいずれかに属していることが条件となる。注目すべきは、2020年以降、VCSは市場投入化、商業化の可能性が非常に高い複数のプロジェクトを除外していることである(図7参照)。例えば、中国(および他の非後発開発途上国)で新たに開発された系統連系用水力発電プロジェクトは、VCSの対象外となった。ただし、マイクログリッドに電力を供給する水力、風力、太陽光、地熱発電の新規開発プロジェクトは含まれず、中国国内にあるこれらのプロジェクトは申請可能である。
 
図7:VCS対象外のプロジェクト
 
カーボンニュートラルLNGのビジネスモデル-VCS事例-
CO2排出を実質的にゼロとみなせる液化天然ガス(LNG)であるカーボンニュートラルLNGは、環境負荷を軽減しながら天然ガスを販売する画期的な方法として注目されている。具体的には、LNGのサプライチェーンで排出される炭素を、カーボンクレジットの購入によってオフセットするというものである。シェルは、カーボンニュートラルLNGのビジネスモデルを運用に適用している先駆者である。2020年6月、中国の国営石油会社である中国海洋石油集団(CNOOC)は、シェルと契約を締結し、シェルからカーボンニュートラルLNGを調達することになった。その後、CNOOCはVCSプラットフォームを通じてVCSにより発行されるVCU(Verified Carbon Unit)クレジットを償却し、2020年11月に排出量をオフセットした。
 
シェルは、まず新彊ウイグル自治区カーボンシンクプロジェクトから発行されたVCUを購入し、LNGカーゴとともにCNOOCに転売することが想定される。こうすることで、CNOOCはシェルから通常の化石燃料LNGを購入しながら、カーボンクレジットを購入・償却し、「カーボンニュートラル」であると主張することができる。
図8:シェルのカーボンニュートラルLNGビジネススキーム
 
実際、シェルは、VCS認証を受けたグローバルな排出削減プロジェクトで構成される Nature-based solutionsというカーボンオフセットポートフォリオを開発している。これらのプロジェクトは、主に中国、インド、ペルーなどの発展途上国で行われており、その多くはカーボンシンクプロジェクトである。現在、中国には7つのカーボンシングプロジェクトがあり、新疆ウイグル自治区カーボンシングプロジェクトはそのうちの1つである。シェルは、このポートフォリオを構築するために、プロジェクト開発会社や地元政府と協力し、プロジェクト開発やクレジット発行の進捗状況を把握している。最近では、シェルがポートフォリオの多様化を進めていることがうかがえる。2022年6月、シェルはCNOOC、広東省政府、エクソンモービルと、広東省における洋上CO2回収貯留ハブ(CCS)の開発可能性を検討する覚書を締結した。このプロジェクトが成功すれば、将来的にカーボンクレジットを発行できることも予想される。
 
図9:シェルのグローバルカーボンオフセットポートフォリオ
出典:シェル公式ホームページ
 
シェルのカーボンニュートラルLNGビジネスモデルの主な推進要因は、スコープ3の排出量を削減することである。シェルが顧客に販売する製品から排出されるスコープ3における排出量は、シェルの総排出量の95%近くを占める最大のスコープである。そのため、カーボンニュートラルの目標を達成するためには、シェルは顧客と協力してスコープ3の排出量を削減しなければならない。
 
最終消費者サイドでのCCERビジネスモデルの実現可能性
シェルのビジネスモデルやカーボンニュートラルLNGのコンセプトは、中国において非常に新しく、市場に対する啓蒙もまだまだこれからというところだ。今後、CCERプログラムが再開されれば、シェルのビジネスモデルは売手側、買手側の双方にとって良い参考となり、「カーボンニュートラル製品」のコンセプトは天然ガスに限らず、様々な種類の製品に広がることが考えられる。
 
さらに、このスキームは、企業レベルを超えて最終消費者までたどり着くことも予想される。水素燃料電池車CO2排出量算定方法の開発に取り組んでいる飛馳汽車は、シェルと同様のモデルを採用し、最終消費者(燃料電池車ユーザー)が炭素市場でカーボンクレジットを販売することを手助けする予定である。飛馳汽車がやろうとしているのは、カーボンクレジット(CCER)を発行できる見込みがあり、クレジットを売りたい燃料電池車ユーザーに対し、同社が小売業者として買い手を探し、クレジットを売り、その収益をエンドユーザーと共有することである。この場合、飛馳汽車はCCERの資金提供の恩恵を受け、収益源を多様化し、燃料電池車事業をより充実させることができる。将来的には、企業だけでなく、実際に排出削減に貢献する最終消費者も炭素市場に参加し、カーボンニュートラルの目標に向けて前進することができるようになることが期待される。
 
中国の炭素市場は発展の初期段階にあり、一定の時間と取り組みが必要である。しかし、市場からは強いシグナルが発信されており、新たなビジネスチャンスをつかむために今は行動を起こすべきタイミングと言えよう。
 
このブログの内容に関する更なる詳細な情報はこちらのレポート:【中国の炭素排出権取引制度にて記載しています。
 
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