この記事を共有する:
記事の閲覧数:826
 ■ 日付: 2023年6月14日
*こちらの記事は、2023年5月4日の弊社英文ブログ Industry Review: Progress after 1st year of FCEV Model City-Cluster Project in Chinaを翻訳したものになります。
【中国水素燃料電池車の動向:モデル都市群プロジェクト1年目終了、その成果は】
この記事の筆者
 
 
実証初年度の概況
2021年8月から2022年8月まで、複数の産業クラスターが主導する4年間全国燃料電池車 (FCEV) の普及応用に向けた補助事業「燃料電池車モデル都市群実証プロジェクト」が、ついに初年度を終えた。しかし、全体的な実証結果は満足のいくものではなかった。新エネルギー車国家監測と管理プラットフォーム (新能源汽车国家监测与管理平台) によると、5カ所のモデル都市群の中、目標を達成したのは北京モデル都市群のみであった。
 
図1:初年度のFCEV実証結果と目標
出典:2021年8月から2022年8まで、強制加入の自動車保険データから収集した結果
初年度の実証目標は、5カ所のモデル都市群であまり達成できていない。
 
また、今年も補助金の支給が延期され、業界関係者の期待や信頼が損なわれた。例えば、Sinopec (中国石油化工) が自社の水素エネルギー戦略を「2025年までに1,000基の水素ステーションを建設」から「2025年までに年間12万トンの水素充填能力を持つ水素インフラを建設」に修正したが、これはおよそ600基の水素ステーション建設に換算することができる。現在、中国におけるFCEV普及の大きな障害となっているのが、水素ステーションの数が不足していることである。中国国内の水素ステーション建設速度を踏まえると、Sinopecの修正された行動計画は2025年までに達成することがより現実的と考えられる。
 
2022年のFCEVの運用状況
 
図:2022年FCEV月間走行距離
出典:新能源汽车国家大数据联盟
FCバスの走行距離は、FCトラックの走行距離に比べ、大きく上回っている。
 
図:2022年新エネルギー車の1日平均走行距離
出典:新能源汽车国家大数据联盟
電気自動車と燃料電池車の走行距離には大きな差はない。
 
新エネルギー車国家監測と管理プラットフォームによると、2022年、FCバスの月平均稼働率は72.24%であった。一方、FCトラックの平均稼働率は42%にとどまり、半数以上のFCトラックが購入後、休車状態になっていた。これはFCEVの開発初期から続く傾向であり、水素価格の高さ、物流トラックのレンタル料金の高さ、水素充填の不便さなど、様々な理由によるものである。FCEVモデル都市群実証期間中は、FCEVの運行補助金により、休車の利用が大幅に促進されることで、この稼働率が大きくなることが予想される。
その結果、FCバスの月間走行距離もFCトラックより大きく上回った。その理由の一つは、2022年に実施されたFCEVの実証運行がFCバスが中心で、バスの走行ルートがある程度決まっているため、現段階では1日の走行時間がかなり長いくことがあげられる。経済面と運営面の両方の観点から、現段階ではFCトラックが 内燃機関トラックを代替する可能性よりも、FCバスが内燃機関バスを代替する可能性が高いと考えられる。
 
実証初年度に直面した問題点
図: 5モデル都市群の概要
出典:INTEGRAL社による要約
 
北京モデル都市群では、最初の1-2年で合計1,162台のFCEVを導入する計画で、FCバスとFC小型トラックが目標の大半を占めた。北京の都市部では、産業用物流のアプリケーションシナリオがあまりなく、そのため大型トラックの実証プロジェクトはほとんどない。しかし、この分野は河北や天津を拠点とするアプリケーションで対応できる。実証期間の初年度、北京は主に公共交通と都市内物流に重点を置いている (実証目標の 82%) 。北京は、2022 年の北京冬季オリンピックを部分的に対象とした旅客輸送の需要が大きく、これまでのFCEV実証プロジェクトの中でも最大規模のものである。河北が第二段に選定されたことで、北京モデル都市群と河北モデル都市群が、それぞれ注力するFCEVを分けて実証する可能性がある。
 
FCEVオペレータに関する記事で述べたように、FCシステムインテグレータは通常、FCEV購入の一部として、OEMとFCEVオペレータの両方のコストを前払い・負担するため、最も重い経済的負担を強いられている。その結果、多くのFCシステムインテグレータは深刻な資金不足に直面し、外部投資に頼って生き延びるところも少なくない。補助金 (ボーナスポイント) の計算方法によると、FCEV普及促進補助金の金額は、FCシステムの定格出力と車両の積載量に比例する。そのため、FC大型トラックの補助金は、FC小型トラックの補助金の2~3倍になることもある。特に大型FCEVの市場規模が拡大していることから、補助金による経済的な支援があれば、システムインテグレータ側のプレッシャーが大きく緩和され、より高出力のFCEV (補助金が多く支給される) の実用化をさらに促進することができる。
 
補助金評価に向けて年次業務概況資料を提出しているプレイヤーが多いにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症の流行状況や、国の補助金政策に沿った地域の補助金政策の実施の遅れなど、様々な理由により評価の進捗状況が大幅に遅れている。各モデル都市群は、専門委員会を組織し、年末に実証結果を評価している。しかし、専門委員会の有識者はそれぞれ異なる立場 (学者、OEM、システムインテグレータなど) にあり、地域によって動的な運用結果に基づくルールが異なる傾向があるため、統一した評価基準を作ることは困難であった。第一段選定の3モデル都市群の中でも、広東モデル都市群は実証1年目が終わった2022年8月にようやく行動計画を発表した。
 
補助金制度の概要
京津冀 (北京・天津・河北) 地域の補助金政策を例にとると、北京市大興区でナンバープレートを取得した場合、国の補助金+北京市の補助金+大興区の補助金という3段階の複合補助金を受けることになる。これまで、地方におけるモデル都市群実証に対する補助金は、大幅に遅れて発表されている。地方の補助金制度は、国の発表から1年以上経ってから発表された (北京、上海) のに対し、他の地域のものはまだ発表されていない。国の補助金の実証期間が2020年から2023年までであるため、地方の補助金もそれに追随して延長されたようだ。例えば、上海主導のモデル都市群や北京市大興区への補助金は2025年まで継続され、国の補助金終了後も地元企業を支援する動きが強まりそうだ。
 
現状では、国の補助金が2023年以降も延長されるかどうかはまだ不明である。しかし、地域レベルでは、例えば、既に2025年まで補助金政策を延長した上海モデル都市群では、国の補助金終了後も報奨の基準は変わらないと政府は強調している。電池式電気自動車 (BEV) の補助金制度を参考にすると、国の補助金が終了した後も、FCEVの実用化促進のために、地域の補助金が継続される可能性が高い。
 
図:補助金制度の例とタイムライン
出典:INTEGRAL社による要約
 
北京モデル都市群の現状
現在のところ、北京モデル都市群が唯一、実証目標100%超を達成した地域である。ただ、北京と河北省では2022年の北京冬季オリンピックが開催されたため、一時的にFCEVの販売台数が急増したとも考えられる。
 
初年度の実証アライアンスリーダーは、BAIC Foton (北汽福田) 、FAW Jiefang (一汽解放) 、Yutong (宇通) 、Higer (海格) の4社である。上海モデル都市群では、アライアンスリーダーが地域のFCシステムインテグレータであるのに対し、京津冀地域では、自動車OEMがより強い地域的影響力を持つ傾向にある。また、北京モデル都市群ではOEMの登録地に制限がないことから、京津冀地域ではFCEV実証プロジェクトの実際の実行に重視していることがわかる。そうすることで、北京は、SinoSynergy (国鴻) 、Mingtian Hydrogen Energy (明天氢能) 、Horizon (清能) 、HaiDriver (海卓動力) など、北京に現地工場を建設するシステムインテグレータをより多く誘致することもできる。この4社は、冬季オリンピックの実証実験に積極的に取り組んできたOEMである (一汽には、COASTERバスを提供した一汽トヨタも含まれると仮定) 。また、4社ともFCトラックの開発経験があり、小型から大型までさまざまな種類がある。こうしたOEMは、残りのトラック実証目標を達成するのにふさわしい存在である。
 
図:2021-2023年の北京モデル都市群の実証目標
出典:INTEGRAL社による要約
 
北京モデル都市群では、最初の1~2年で合計1,162台のFCEVを導入する計画で、FCバスとFC小型トラックが実証目標の大半を占めている。実証目標のほぼ半分は、FC中型・大型バス (10.5m以上) の運用であった。冬季オリンピック終了後、FCバスは都市間輸送や都市内観光などの業務に投入された。都市間を結ぶ都市間FCバスは、延慶区で通常の高速バスとして運行されている。車内を見ると、こうしたFCバスは都市バスに比べて定格出力が高く、走行距離も長い、もともと都市間FCバスであったことがわかる。
 
図:冬季オリンピックで運行されたFoton (福田) の都市間FCバス車両群
出典:公開情報
919番バス (都市間バスに準ずる) の乗車状況
出典:公開情報
 
深刻な大気汚染を背景に、北京は、寒冷な気候でBEVの走行燃費が著しく悪化するにもかかわらず、中国で初めてタクシー分野でBEVを推進した都市である。そのため、北京はFC乗用車をタクシーや配車サービスなどの商業用途で普及させるのに最適な立地とも言える。今後のFCEV実証目標はまだ発表されていないが、上海、北京、広東、河南に続き、乗用車の実証目標の一部が対象となると考えられる。また、2022年に北京で現代 NEXO FCEV 1 台が新エネルギー車 (NEV) プレートを取得した。現代自動車は今後、北京モデル都市群での乗用車実証に参加することもあり得る。
 
北京モデル都市群のもう一つの焦点は、FC冷凍トラックの普及である。2022年3月、FCEVオペレータのShunyida (順億達) と共に、大興区で合計100台のFoton FC冷凍トラックが運行開始された。このような小型トラックは、コールドチェーンの食料品を扱うスーパーマーケットにサービスを提供している。
 
天津地区では、Rongcheng Group (栄城集団) とTianjin Port Group (天津港集団) が、鉄鋼輸送と港湾物流にFC大型トラックを配備するニーズがある。天津港貿易自由区管理委員会の責任者によると、Bohai Chemical Industry Group (渤海化工) は豊富な副生水素資源を持ち、現在、天津港に水素燃料補給マザーステーションを建設している。また、Air LiquideやSinopecも近い将来、水素の供給確保に参加する予定だ。用途としては、天津港が世界最大級の港であることから、大型トラック、フォークリフト、鉄道クレーンなどの分野でのFC応用を推進する上で重要な地域の一つとなっている。
 
上海モデル都市群の現状
図:2021-2023年の上海モデル都市群の実証目標
出典:INTEGRAL社による要約
 
上海モデル都市群では、中型から大型トラックの実証に注力している。上海でも大型トラックの応用シナリオは限られているにもかかわらず、補助金政策は商業物流分野での大型トラック実証を奨励しているようだ。また、商用FCEVを優先的に推進するという国家発展改革委員会のロードマップの方向性とは異なり、SAICと長城汽車の影響下で計画されるであろう乗用車の実証も特有の要素である。 (広東省の草案にも乗用車の実証実験が含まれており、これは現代自動車と広州汽車 (GAC) の影響によるものだろう。) 
 
上海が2022年4月から6月にかけて新型コロナウイルス感染症によるロックダウンを実行した後、自動車業界も大きな打撃を受けた。初年度の実証目標に追いつくため、上海市は8月上旬に政府要人を招きながら一斉にFCEV運用開始式を行い、上海におけるFCEV普及の重要性を示した。
 
 
図:上海FCEV運用開始式
出典:公開情報
 
政策的には、上海市政府、上海市の区政府は、FCEVの推進に非常に前向きな姿勢を見せている。例えば、上海市発展改革委員会の年次活動報告書「上海市2022年国家経済社会発展計画の実施状況および2023年国家経済社会発展計画草案に関する報告書」では、25の重点プロジェクトの中で、上海政府がSAICとFCEV試験の研究開発事業を支援すると言及している。上海臨港区も今後3~5年以内に全てのバスをFCバスに置き換えると発表した。
 
2022年末までに、上海では既に約2200台のFCEVが稼働しており、そのうちSHPT FCシステムを搭載したSAIC FC乗用車80台が「享道出行」プラットフォーム (SAICが開発した、上海市民がよく利用する鉄道配車サービスプラットフォーム) の配車サービス車両として利用されている。FC乗用車OEMの子会社がFCEVを購入し、フリートとして運用するというこのFCEV応用促進モデルは、他のFC乗用車OEMの手本となる可能性がある。乗用車と商用車では運用の性質が異なるため、FC乗用車の商用運用については、OEMが主導的な立場となる。
 
FCEVのシステムインテグレータであるFCEV実証アライアンスリーダーの選定について、上海政府はよりオープンで積極的な姿勢を見せている。スタートアップ企業 (REFIRE) と従来の有力企業 (SAIC-SHPT) の両方を選定し、2022-2023年の実証期間にはCumminsも新しいリーダーとして選ばれ、海外FCメーカーとして初めて中国のFCEVモデル都市群実証プロジェクトに正式に参入することになった。NEV分野では、長江デルタが全国のNEV生産の約40%を占めており、国内外の主要FCサプライヤーの製造拠点や研究開発センターが複数あるなど、NEV産業における相乗効果を発揮している。また、現地で登録されたシステムインテグレータが実証プロジェクトを主導することは、上海市がFC産業全体の技術的なブレークスルーを重視していることを示唆している。
 
上海市のほか、オルドス市、蘇州市、嘉興市などの参加都市では、地域の実証行動計画や補助金政策が徐々に打ち出されている。特にオルドス市では、Feichi/SinoSynergy、Hongyan/SHPT、XCMG/Sunrise Powerなど、多くのシステムインテグレータやOEMが相次いで製造工場を建設している。オルドス市は、中国でFC大型トラックの実証実験が行われる重要な地域の一つとなりつつある。
 
広東モデル都市群の現状
広東モデル都市群は、もともとFCEVを推進する上で最も強力な基盤と歴史を持つ地域であった。しかし、水素資源の不足という問題が解決されていないこともあり、実証初年度は目標の20%しか達成できず、第一段選定の3モデル都市群の中で最も低い数値となった。しかも、行動計画「広東省における燃料電池車実証都市群の建設加速に向けた行動計画 (2022~2025年) 」も1年目の終了直前に正式に発表された。この行動計画では、北京や上海が毎年発表しているような、実証に使用するFCEVの台数や種類、走行ルートなどの具体的な目標がなかった。その結果、地方政府のあいまいな態度は、広東省の地元企業の意欲を強く阻害することになった。広東省では、佛山・雲浮以外に、FCEVの普及が進んでいる都市はない。2022年10月現在、広東省には合計16社の水素メーカーがあり、年間の水素製造能力は約65万トン、46基の水素ステーションが建設されており、その内訳は、スタンドアロン型水素ステーション30基、複合型水素ステーション11基、オンサイト水素製造・充填ステーション5基となっている。しかし、水素ステーションの多くは佛山市や広州市にあり、茂名市、湛江市、揭陽市などに多く存在する副生水素資源からは遠く離れている。現段階では、水素の長距離貯蔵・輸送に多くの課題を抱えており、これらの地域で発生する副生水素を広東省や佛山省に供給することは困難である。一般的に、長江デルタ地域や京津冀地域に比べ、珠江デルタ地域は副生水素資源が少なく、この制約により水素コストが高く、この点が広東モデル都市群でのFCEV普及を遅らせる原因の一つになっていると考えられる。
 
珠江デルタ地域は中国のもう一つの物流拠点であることから、物流実証の目標は上海の実証目標に近いのではないかと考えている。一方、広東省政府はFC清掃車の一括購入を行っているようだ。青島以外に、広州も政府が500台のFC清掃車を一括で取引しているところである。例えば、広州市黄浦区政府がインキュベートした現地のスタートアップ企業Xiongchuan Hydrogen Energy (雄川氢能) は,黄浦区政府からの大量発注により、2022年のFC大型トラックの販売台数でトップクラスになった。意外なことに、雄川氢能はもともとシステムインテグレータであったが、2022年にOEMとして初のFCEVを開発したこともある。また、ファイナンスリース契約を取得し、珠海市での市場拡大をさらに進めている。
 
また、広州市と佛山市の両市の地域行動計画でも言及されているように、コールドチェーン物流は、今後3~5年の間に、もう一つの焦点となり、成長市場になりつつある。ますます多くの物流サービス業者が、従来のサービス供給業者や FCEV限定のスタートアップサービス供給業者を含め、FCシステムインテグレータやOEMと戦略的パートナーシップを結んでいる。例年、広州市と佛山市は中国で最も多くのFC小型中通物流トラックを保有していた。しかし、実際の運行結果は、多くのFC小型トラックが長期間休車するなど、満足のいくものではなかった。この失敗の理由としては、水素価格の高騰 (当時は補助金がなかった) 、水素充填の不便さ、対象となる顧客が小型電気トラックに乗ることに大きな不満がなかったことなどが挙げられる。今回、FC冷凍トラックが市場のペインポイントをよりよく解決し、今度こそNEV物流市場に確実に浸透することを期待している。
 
 
河北モデル都市群の現状
河北省は豊富な再生可能エネルギー資源に恵まれており、これまで複数のグリーン水素製造実証プロジェクトが稼働している。張家口市は2022年冬季オリンピックの都市間バスの実証に取り組んでおり、他の参加都市も産業用大型トラック (主に鉄鋼) で幅広い応用シナリオを持っている。河北モデル都市群の一部の都市は、北京モデル都市群と重なっている。
図:河北モデル都市群の実証概要
出典:INTEGRAL社による要約
 
河北モデル都市群では、実証初年度のFCEV登録率は低かった。また、曖昧な点がいくつか見受けられる。北京モデル都市群の初年度目標から、一部のFCEV走行ルートが既に河北省の一部地域を包含していることがわかる。河北モデル都市群の参加都市は北京モデル都市群と多少重複している。その違いは、北京モデル都市群では河北省の都市が水素資源の提供に重点を置いているのに対し、河北モデル都市群では河北省の都市が車両運用に力を入れているとされることだ。しかし河北省では、FCEVの応用シナリオはあまり見られない。さらに、国内大手OEMであるGreat Wall Motor (長城汽車) は、河北省保定市に本社を構えている。中国のFCEV推進プロセスにおけるOEMの地域的影響力を考慮すると、長城汽車とそのFC子会社であるFTXT (未勢能源) は、河北省のFCEV産業全体の発展を主導することになるはずだ。ところが、FTXTのFCシステムも長城汽車のFC車も、他の大手システムインテグレータや国内OEMと比べると、実用化プロセスは比較的遅れている。河北省における現在の実証事業は、SinoHytec (億華通) 、REFIRE (重塑集団) 、Nowogen (氢璞創能) 、SinoHytec-Toyota (華豊燃料電池) といった他の新進システムインテグレータが主導しているのが実情である。
 
オリンピック終了後も、河北モデル都市群がFCEVの実証事業に主体的に取り組むことができれば (京津冀モデル都市群の支援とは対照的に) 、河北省はまだ高い潜在力を持つ市場だと考えている。冬季オリンピックに向けて、張家口市は35/75MPaの水素ステーションを複数建設し、水素供給を確保した。また、河北省はグリーン水素製造を推進する重要な地域の一つであり、張家口市には大規模な再生可能エネルギーによる水素製造の実証プロジェクトが複数ある。
 
一方、河北省の経済は、重工業に大きく依存している。すなわち、邯鄲市、保定市、唐山市は副生水素を大量に製造でき、49TトラクタータイプのFCEVに高い需要がある。また、フォーチュン500社番付の中国企業の1社であるHBIS (河北鋼鐵集団) は、従来のビジネスを大きく変革することが急務であることは言うまでもない。
 
河北省の参加都市
張家口市は、国務院から認可された唯一の国家再生可能エネルギー実証区である。張家口市は、中国の中でも再生可能エネルギー資源が最も豊富な地域の一つであり、そのため、中国でグリーン水素製造の実証が最も盛んな地域の一つでもある。張家口再生可能エネルギー基地は、河北建設投資集団の風力発電水素製造、HyPower (海珀爾) 風力発電水素製造、Zhongzhi Tiangong (中智天工) 風力発電水素製造など、複数のグリーン水素プロジェクトに投資している。
 
2022年冬季オリンピックでは、北京が雪上競技を実施したのに対し、張家口市は氷上競技を開催した。張家口市は既に中国初の70MPa水素ステーションを含む9基の水素ステーションを建設しており、全体の1日充填能力は7.9トン/12時間である。北京競技会場ではBEVと天然ガス車 (NGV) が多く、延慶競技会場と張家口競技会場ではFCEVが多く導入された。冬季オリンピック期間中、約1200台のFCEVが運用され、合計710台のFCバスが延慶から張家口まで選手や観客を輸送していた。
 
保定市は、京津冀地域の水素エコロジーに深く関わっており、例えば、北京-天津-保定-淄博の4都市、北京-保定-濱州の3都市で展開されている。前述のように、長城汽車は保定市に本社を置き、保定市の戦略的提携先とFC大型トラックの5年間の実証計画を複数締結している。
 
唐山市と秦皇島市は、河北省の2大港湾都市である。どちらも港湾大型トラック輸送の需要が大きい。
 
邯鄲市は、中国船舶重工集団 (CSIC) 第718研究所で知られている。邯鄲市にあるCSIC第718号研究所では、早くから1960年代から1970年代にかけて、水素製造とその関連技術の研究を行っていた。
 
唐山、邯鄲、石家荘、邢台、定州などでは、HBIS、華峰能源、錦世化工、旭陽集団などの企業に依存しており、高効率で低コストの工業副生水素プロジェクトに取り組んでいる。
 
河南モデル都市群の現状
図:河南モデル都市群の実証概要
出典:INTEGRAL社による要約
 
河南省の全体的な状況は、河北省と似ている。石炭産業からの副生水素が豊富で、再生可能エネルギー市場 (特に風力発電市場) も中国のトップシェアを占めている。河南モデル都市群では、FCEVの実証全体は河南省のOEMである宇通集団が主導している。政府側の投資誘致計画により、Yuqing Power (豫氢動力) 、Nowogen (氢璞創能) 、G-power (風氢揚) 、Jichong Hydrogen Energy (驥翀氢能) など、いくつかの新進システムインテグレータが既に河南省での工場建設を計画している。こうした地元システムインテグレータは、河南省の燃料電池産業の変革を後押しすることになるだろう。 (注:河南省、河北省ともに実証目標に達していないにもかかわらず、2023年の実施状況を見ると、FCEVの実用化という点では、長城汽車よりも宇通集団の方がはるかに積極的であることがわかる) 。
 
 
河南省の参加都市
河南省の省都である鄭州市は、河南モデル都市群全体の実証を主導している。鄭州市は、宇通集団を中心に、実証開始以来200台以上のFCEVを推進している。乗用車OEMとして知られる長城汽車とは異なり、宇通集団は既に中国を代表する新エネルギー商用車のOEMとなっている。宇通集団は、中国で最も大きなEVバスの市場シェアを持ち、NEVの運用とメンテナンスにおいて最も豊富な実績を持っている。宇通集団は、今後もNEVのリーディングカンパニーとして、河南省全域でFCバス (by宇通客車) とFC大型トラック (by宇通重工) の普及に取り組んでいく。
 
濮陽市
河南省の北東部に位置し、河北省と山東省に隣接している。その地理的位置から、濮陽市は河南省と山東省を結ぶ交通回廊として重要な役割を担っている。2022年7月、濮陽市は7つの水素産業投資プロジェクトを締結し、投資総額は293億人民元に達した。濮陽市は河南省で最も多くの風力発電を行っており、再エネ発電設備容量は2MWである。
 
安陽市
河南省で最も多くの副生水素資源を保有している。安陽市は既に、河南地域とその周辺のFCEV応用に必要な水素資源を外部に供給できる能力を持っている。
 
新郷市
25億人民元を投じて10の重点水素産業プロジェクトを立ち上げ、産業クラスターを形成した。政府の投資により、Yuqing Power (豫氢動力) 、Suzhou Qingdong (蘇州擎動) 、Shanghai Qingchu (上海氢儲) 、Fenergy (鋒源氢能) などのFC企業が新郷に支店を設立するよう誘致された。
 
焦作市
FC大型トラックの大きな需要を生み出す鉱山、汚泥、公衆衛生、セメント混合、公共交通など、複数の応用シナリオで水素燃料車を推進できる利点がある。
 
開封市、洛陽市
FC主要部品の供給に注力している。例えば、驥翀氢能は、金属バイポーラプレートとFCシステムを製造する工場を洛陽に建設している。
 
まとめ
中国水素燃料電池車モデル都市群プロジェクト実証の初年度にはさまざまな壁があったが、上流のグリーン水素製造から下流のFCEV OEMまで、この業界に参入するプレイヤーが増えつつある。実証期間2年目には、景気刺激策となる各種補助金政策の継続的な導入により、FCEV関連プロジェクトの実行が加速され、資本市場の後押しもあり、業界は引き続き比較的急速な成長の勢いを維持するだろう。例えば、2022年に新型コロナウイルス感染症の流行が終息した後、FC大型トラックの推進数が大幅に増加し、特に河北省と河南省では実証目標に追いつくほどの速いスピードを見せている。
図:2023年2月までのFC大型トラックの普及台数
出典:公式自動車保険販売データ
 
このブログの内容に関心のある方は、こちらのレポートもご参照ください。2023年中国水素・燃料電池産業の最新動向にて記載しています。
 
■ 新規入会登録はこちらから(会員登録は無料。ご登録頂くと会員限定のサンプルレポートの閲覧・ダウンロードの閲覧が可能になります
この記事に関して自由なご意見・ご質問を募集しています!下のコメント欄に記入お願いします。