この記事を共有する:
記事の閲覧数:179
■ 日付: 2023年12月8日
*こちらの記事は、2023年8月10日の弊社英文ブログ 【China's Offshore Wind Turbine Manufacturers Pioneering the Global Market:
What Does it Mean for the Rest of the World? を翻訳したものになります。
 
世界市場をリードする中国の洋上風力タービンメーカー: 世界にとって何を意味するのか?
 
この記事の筆者
 
 【まとめ
  1. 中国は洋上風力セクターにおいて主導的地位を確保し、近年は着実に成長している。この持続的な成長は、2021年に中国の風力発電に対する「固定価格買取制度」という優遇制度が打ち切られた後も続いており、補助金依存から市場志向への転換を意味している。
  2. 業界の競争激化に応え、継続的なタービン大型化や川上の主要コンポーネントの現地生産化など、コスト削減の実現に向けた多様な技術動向が現れている。
  3. 予測によれば、この業界は今後数年で飛躍的な成長を遂げ、最終的には経済的に存続可能な状態になる。中国タービンOEMにとって、海外市場への進出は期待できる、MingyangやGoldwindのような業界リーダーが既に道を切り開いている。
  4. 中国の洋上風力タービンの輸入に関する保護主義的な姿勢に起因する懸念があるにもかかわらず、中国が洋上風力セクターにおいてより大きな存在感を確立することは徐々に明らかになっている。この傾向は、欧米市場、特に欧州と北米における需要と供給の不均衡が予見されることで、より鮮明になっている。
 
キーワード: #再生可能エネルギー  #洋上風力発電 中国  #市場拡大  #サプライチェーンの現地化
 
この記事の内容にご関心のある方は、こちらのブログ記事もご参照ください。【中国の再生可能エネルギー:洋上風力発電が本格始動、その行方は?
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
 
市場概要:
中国タービンOEMはこれまで、主に中国の国内市場に目を向けてきたため、陸上風力セクターとは異なり、世界市場を支配するグローバルプレイヤーが不在であった[1]。世界市場を見ると、2022年の洋上風力発電の設置台数では、デンマークに拠点を置くVestasが首位を維持し、中国の2社、Shanghai ElectricMingyangが僅差で続いた[2]。国内競争では、この2社以外にもCSSCとEnvisionが、中国市場の上位タービンメーカーの中で洋上風力発電に注力する姿勢を明確に示している。
図1. 中国本土のタービンメーカー上位10社
 
政府補助金の打ち切りも理由の一つだが、「カーボンピーク」「カーボン・ニュートラル」といった国策に準じた再生可能エネルギー導入への野心的な目標や、再生可能資源と需要地域の地理的なミスマッチなど、洋上風力発電が急増している背景には、複数の要因が考えられる。(関連記事:【中国の再生可能エネルギー:洋上風力発電が本格始動、その行方は?】)
 
中国の各タービンメーカーが15MWを超える大型タービンの製造に取り組んでいるとはいえ、こうした試作品や1回限りの納入品は、連続生産が商業レベルに達していないこともあり、市場の主流を反映することはできない。2022年の洋上風力発電機の単体設置容量では、中小型洋上風力発電機の割合が依然として比較的高く、新機種の容量は主に8MW級に集中している一方、昨年は10MW級以上の新設比率が全体の12%を占め、この比率は今後数年でさらに高まると予想される。
図2. 2022年のタービン1基あたりの洋上風力発電設備容量 (MW)
 
陸上風力発電事業が堅調に推移するなか、継続的なコスト削減の実現により中国のタービンメーカーが世界市場で競争力を獲得したことで、洋上風力発電事業が著しい成長を遂げている。中国では、巨大化する国内市場と現地化されたサプライチェーンが強みであり、プレイヤーは政府の補助金なしで事業規模を拡大することができる。
図3. 中国の洋上風力発電設備容量
 
競争激化:中国の洋上風力発電は経済的かつ大規模に
洋上風力発電の主要プレイヤーが続々と事業規模を拡大するなか、CRRCやDongfang Electricといった新規参入企業も洋上風力セクターへの参入を試みており、この急成長する市場でシェアを獲得しようとする姿勢が見て取れる。競争が激しくなるにつれ、中国のタービンメーカーは15MWを超える大型タービンの開発に注力し、今や18MWという既往最高水準の容量にまで達している。この背景には、プロジェクト開発者は通常、市場で入手可能な最大級の風力タービンを選好するため、プロジェクト容量が同じであれば必要なタービンの数が少なくなり、kWhあたりのO&M(運転・保守)コストがさらに削減される
 
図4. 主要プレイヤーの最大洋上風力タービンの研究開発状況
 
市場で実現される取引と研究開発の方向性との間にはまだ隔たりがあり、前者は通常、試作品の検証や市場投入に数カ月から1年以上かかるため、市場の需要にも影響されることがある。市場で販売されている洋上風力タービンの設置容量は主に小・中容量(8MW)の機種だが、過去2年間、国内の主要な風力タービンメーカーは、研究開発を進め、試作品を検証しながら、15MW以上の高出力洋上風力タービンの導入を現実化してきた。例えば、MingyangCSSCは2023年に18MW級の超大型風力タービンの研究開発を成功裏に完了し、翌年には連続生産が開始される見込みである。
 
図5. 中国洋上風力OEMの主流の研究開発の方向性
 
メガワット級の大型風力タービンを開発する傾向に加え、より高出力の次世代製品としてセミダイレクトドライブ式風力タービンがメーカーに選好されていることも見られる。この中速機種は、ギアボックスと組み合わせた一体型モーターが採用され、シンプルで効率的な構造で、製造コストが比較的低く抑えられている。中国の業界では、セミダイレクトドライブ式の方が、安定性と発電効率の要件を満たすのに適しており、特に大型洋上風力タービンは価格に敏感な市場にも対応しているとされている。現在、セミダイレクトドライブ技術はまだ大規模に導入されていないにもかかわらず、洋上風力発電大手のMingyang、CSSC、Goldwindは、この技術を製品として具現化し、大型洋上風力タービンへの導入促進に共同で取り組んでいることを示した。これを受け、Shanghai Electricなどの他のメーカーも、次世代の高出力洋上風力タービンでセミダイレクトドライブ技術への転換を表明している。
 
低コスト化のニーズが高まる中、サプライチェーンの現地化も新たな傾向となっている。過去数年間、中国は世界有数の洋上風力タービン製造拠点となったばかりでなく、主要コンポーネントや原材料の最大の製造拠点となり、世界情勢の急変や経済の不確実性にもかかわらず、強固で弾力的なサプライチェーンが確立されている。2022年、サプライチェーンの混乱に苦戦した欧米市場とは異なり、中国の機器メーカーは、継続的に増加する内需と高度に現地化されたサプライチェーンのおかげで、業績が比較的堅調に推移している。
 
全体的に見ると、大型洋上風力発電用コンポーネントの現地化レベルは、一部のコンポーネントや副資材を除けば高く、中でも軸受の現地化レベルは最も低く、依然として輸入に大きく依存している[3]。 副資材に関しては、主に短期間では克服できない高い技術の壁があるため、日本や欧州のプレイヤーから供給されているものもある。例えば、ブレードの製造は中国で完全国産化されているが、その重要な原料である炭素繊維の供給は、依然として東レやSGLなどの外資系企業に大きく依存している。
 
サプライチェーンにある大部分の主要コンポーネントの製造において、現地化が推進されている。大型洋上風力タービンの技術革新が進み、主要コンポーネントへの要求も高まっている中、新たな課題と機会がもたらされる。O&Mコストが高いこと、風力タービンの容量が大きくなるほど交換・修理の難易度が高くなることから、主軸軸受やギアボックス軸受など、タービンの価値が最も高い部品は、安定性耐疲労性においてより優れた性能を持つことが期待されている。
図6. 大型洋上風力発電主要コンポーネントの動向まとめ
 
 
 
課題はあるにせよ、主要技術や機器調達における海外プレイヤーとの協力関係の深化がここ数年見受けられることから、国内部品サプライヤーの最終目標である100%現地化は、もはや時間の問題であると考えられている。主要部品サプライヤーへのインタビュー[4]によると、洋上風力発電用コンポーネントはサイズが大きいため、輸送コストが非常に高く、この価格に敏感な市場では、タービンメーカーやプロジェクト開発者は、新製品の安定性と耐久性が世界最高水準と同等であることが検証できる限り、輸入品よりも国産コンポーネントを優先する傾向がある。
 
現地化の進展に応え、海外プレイヤーはさまざまな戦略を駆使してサプライチェーンへの浸透を図っている。例えば、Siemens-Gamesaは、当初はShanghai Electricへの技術供与を行なっていたが、競争が激化するとタービン製造の利益が減ることから、次第に洋上風力タービンのブレード供給のみに転じた。一方、大手軸受メーカーであるSKFは、原材料から川下のOEMに至るまで、共同開発や技術共有といった形で現地提携先を起用し、現地の軸受サプライチェーンの構築と業界全体の技術進歩を迅速に実現し、中国での事業規模を拡大している。
 
国内外の影響の組み合わせが、事業拡大の "好機 "を迎え
中国の洋上風力産業は、さまざまな要因により、世界市場で存在感を増しつつある。洋上風力エネルギーへの世界的需要の高まりは、欧州や北米での製造制限[5]と相まって、中国がそのギャップを埋める好機を提供している。世界の洋上風力発電市場において、中国がその存在感を増している理由を考察する:
 
  1. 世界的需要の高まりと中国でのコスト優位性
各国が再生可能エネルギー導入目標の達成と二酸化炭素排出量の削減に取り組むなか、洋上風力エネルギーの需要は世界的に急増し続けている。しかし、洋上風力セクターで従来から優位を占めてきた欧州や北米の製造能力は限界に直面している。世界風力会議(GWEC)の試算[6]によれば、需要に十分応えるナセル生産能力を有する中国、インド、ラトアムを除けば、それ以外の地域は「通常通りのシナリオでは、予期される成長に応えるために輸入風力タービンに依存し続ける」と予想されている。
 
  1. 輸出機会と収益の安定性
2022年に中国の洋上風力発電補助金が段階的に打ち切られることで、国内市場だけに依存することのリスクが浮き彫りになった。中国の洋上風力発電サプライヤーは、収益を確保し成長を維持するため、また国内での価格競争を生き残るために、次第に自社製品の輸出を模索している。海外市場での存在感を増すことで、中国メーカーは自社の顧客基盤を多様化し、政府補助金への依存を減らし、長期的により安定した収益源を確保することができる。
 
現在、海外への輸出現地生産の両面で市場展開を進めている。中国風力エネルギー協会(CWEA)によると、2022年には112基の洋上風力タービンが国外に輸出され、その発電容量は489.8MWに達した。タービンメーカーの中では、Mingyangが群を抜いて海外で洋上風力発電事業を戦略的に展開し、複数の国を対象としている。同社は、ベトナム市場における既存の陸上風力発電事業に加え、欧州、日本、韓国の洋上風力発電市場にも注力している[7]。Mingyangは、イタリア・タラントや日本のさまざまなプロジェクト以外にも、2021年に16MWの浮体式洋上風力タービンをノルウェーに供給する契約を締結し、既に事業化可能性評価書を正式受領している。
 
輸出の取り組みに加え、海外市場シェア拡大という長期目標の達成に向け、中国OEM各社も世界的に地域化が加速するなか、海外現地生産の展開に乗り出した。このように、中国プレイヤーが現地に持ち込む製造力は、当地政府にとって好ましいものとなる。例えば、Mingyangは海外製造施設への投資も開始している。同社は、英国政府と風力タービンとブレードの製造拠点、およびドイツのハンブルグにエンジニアリングセンターを設立することで合意し、これにより欧州市場での現地生産をさらに確実なものにする。また、2022年5月、韓国最大手の風力タービン製造・風力発電事業者であるUNISONと戦略的協力協定を締結し、韓国に風力発電センターを設立することで、韓国市場に適した固定式および浮体式洋上風力タービンの研究開発を促進することを目指している。
 
他のプレイヤーも動き出し、Goldwindは2025年までに海外市場で5%の市場シェアを達成すると表明し、Dongfang Electricも欧州に研究開発センターの設立を計画している。中国市場プレイヤーによる現地化戦略のさらなる深化と海外受注の増加は、必然的にこうした地域におけるVestasのような洋上風力産業の既存大手の市場シェアに大きな脅威をもたらすかもしれない。
 
 
まとめ
まとめると、中国の洋上風力産業の動向は、複数の重要な動きによって特徴付けられる。国内市場は著しい急成長を遂げている。同時に、コスト削減と経済性の向上を目的とした、技術的進歩、タービンの大型化、サプライチェーンの現地化などが強化され、競争環境が激化している。
 
中国国内の価格競争に勝ち残り、現在の価格優位性を活かして将来の世界市場シェアを獲得するために、中国OEMは海外事業展開を求め、海外でのビジネスチャンスを模索するだろう。輸出事業の拡大海外での現地生産が実践されると予想されるが、後者は地政学的な懸念から現地製造産業保護主義に向けた高まる政府のイニシアティブに呼応するものである。MingyangやGoldwindなど、このような大手ベンチャー企業の例は既に現れ始め、海外生産へのさらなる挑戦が期待されている。
 
昨今の欧米市場における貿易保護主義や地域化などの潜在リスクがあるにもかかわらず、市場成長と継続的なコスト削減への潜在力は、必然的に中国の洋上風力産業をグローバルな事業拡大へと向かわせるだろう。このことは、中国が洋上風力発電の世界的な舞台で今後大きな存在感を示し、世界市場に潜在的な課題と機会の両方をもたらすことを示唆している。
 
出典:
[1] Bloomberg, 2023-03-23, Goldwind and Vestas in Photo Finish for Top Spot as Global Wind Power Additions Fall
[2] CWEA, 2023-03-29, 2016-2022年中国风电吊装容量统计简报
[3] 风能杂志, 2022, 主轴轴承国产化还需多久
[4] Interview with the key component suppliers not limited to Xinqianglian Bearings and NGC transmission
[5] Wood Mackenzie, 2023-02-07, Expansion opportunities beckon for China’s wind companies
[6] GWEC, Global offshore wind report 2022
[7] 界面新闻,2022-06-08,冲进欧洲、日本,中国风电出海“夺食”
 
 
このブログの内容に関心のある方は、こちらのレポートもご参照ください。中国洋上風力発電におけるO&M
 
■ 新規入会登録はこちらから(会員登録は無料。ご登録頂くと会員限定のサンプルレポートの閲覧・ダウンロードの閲覧が可能になります
この記事に関して自由なご意見・ご質問を募集しています!下のコメント欄に記入お願いします。