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■ 日付: 2023年12月8日
*こちらの記事は、2023年9月26日の弊社英文ブログ Supply Chain Challenge in China’s Offshore Wind: The Vessel Shortageを翻訳したものになります。
 
中国洋上風力発電のサプライチェーンにおける課題:船舶不足に直面
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[まとめ]
1. 中国の洋上風力発電発展において、主たる課題はサプライチェーンにあり、船舶は、洋上風力発電のサプライチェーンにおいて、プロジェクトを完了させる上で重要な位置を占める。
 
2. 現在、中国では船舶が不足しており、中国タービンの大型化が進み、このまま洋上風力のプロジェクトが遠洋に及ぶとさらなら船舶不足が深刻化する。例えば、吊り上げ能力1,600トン以上のWTIV、ケーブル敷設能力5,000トン以上のケーブル敷設船、SOVが短中期的に供給不足に直面することが考えられる。
 
3. 船舶稼働率の向上には、船舶管理や"Window of Opportunities"の予測を可能にするデジタル・プラットフォームが求められる。
 
4. 現在、グリーン海運物流は直近の課題ではないが、将来的には入札の決定的な要素になることが予想される。海運セクターにおける脱炭素化の準備を早急に進めることが望ましい。その中で、メタノール燃料船は、SOVの選択肢となりうる。
 
キーワード #洋上風力発電 #WTIV #SOV #CTV #メタノール燃料船 #船舶不足
 
この記事の内容にご関心のある方は、こちらのレポートもご参照ください。中国の洋上風力発電におけるO&M

地方政府が打ち出した意欲的な目標
中国の洋上風力発電市場は、現在世界最大であり、世界の総設備量の48%を占めている。しかし、2021年に洋上風力発電の国庫補助金が打ち切りとなり、地方政府が自らの管轄海域でのさらなる発展を後押しする必要に迫られている。発表された沿岸都市部の第14次5カ年計画によると、2025年までに約72.6GWの容量の追加が計画されている。洋上風力発電の経験を豊富に有する広東省と江蘇省が引き続きリードしていく形となっている。両省はともに電力消費量が多く、風力資源に恵まれている。さらに注目されるのは、山東、広西、海南など、現地で風力発電設備を持たない、または、ほとんど持たない省も、意欲的な計画を立てていることだろう。
 
図1. 第14次5カ年計画期間中の沿岸域における計画新設容量
 
図2. 利用可能な地方補助金
 
地方政府の計画通りに進めば、2025年には中国の洋上風力発電の累積容量は100GW以上に達する見込みである。中国がこの目標を達成する為には、年間約11GWの新規設備を追加する必要があるが、これにはいくつかの障害が考えられる。
 
図3. 中国の風力発電累積設備容量 (GW) 
 
現場における船舶不足
2022年、中国市場で新設洋上風力発電の減少が観測された。補助金の廃止に加え、この減少の主な原因のひとつとして挙げられるのが、サプライチェーンが構築の遅れである。洋上風力発電の急成長は、部品、船舶、港湾インフラの不足を招き、価格の高騰をもたらし、その結果、プロジェクトが遅延リスクにさらされている。英国など他国と同様に、中国でも最も深刻な課題のひとつは船舶の不足である。2022年においては、国の補助金打ち切りによる "設置競争"で、建設用船舶は供給不足となり、価格は3倍に跳ね上がった。
 
建設船 (WTIVとケーブル敷設船) 
洋上風力発電設備の設置工事を行う際には、主に2種類の船舶が使用される。タービン建設用の風力発電設備設置船 (WTIV) と海底ケーブル用のケーブル敷設船である。
 
WTIVに関しては、供給不足に陥っていないが、まもなく困難に直面することが予想される。現段階では、中国は、計54隻のWTIVを保有しているが、その多くが吊り上げ能力1,200トン以下で、主に小型タービン (7MW以下) にのみ対応している。2021年までにおける、中国の風力タービンの平均サイズは約5~6MWなので、一見十分に見えるだろう。
 
しかし、今後、タービンの大型化に伴い、既存の船舶では役割を担えなくなり、重量物運搬用の大型で強力な船が必要になる。将来的には、吊り上げ能力1,200トン以下のWTIVは徐々に姿を消していくだろう。2022年、中国の生産ラインから出荷される新設洋上風力タービンの平均サイズは約11.5MWである。Mingyang (明陽) とCSSC (中国海装) が、2022年に発表したタービンのサイズは、18MWに及ぶ。 (関連記事:世界市場を牽引する中国の洋上風力タービンメーカー: 世界にとって何を意味するのか?) 公開されている入札情報によると、2023年に新設されるタービンの平均サイズは、約8~10MWになることが見込まれている。この種の大型タービンには、少なくとも1,200トンの吊り上げ能力を持つWTIVが必要である。ところが、GWECと国内の業界データによると、中国には1,200トン以上のクレーンを備えた建設船が15隻しかなく、10MW以上のタービンに対応できるものは2隻しかない。現在建設中のものでも、15~16MWのタービンの建設が可能なのは5隻しか存在せず、18MWタービンに対応できるものは1隻もない。このままでは、今後さらに大型化する洋上風力発電プロジェクトに対応することはできない。
 
図4. 主要OEMの超大型タービンの現状
 
2021年の設置競争による供給不足の際には、2022年の船舶レンタル・リース価格の高騰にもつながった。価格は、月400万人民元から1,000万人民元、さらには1,800万人民元まで跳ね上がった。
 
図5. WTIV
 
ケーブル敷設船に関しては、中国は現在約50隻を保有しているが、多くの船が旧式で連続作業能力が低いことが主な課題となっている。ケーブル敷設船の平均船齢は10年以上で、2017年以降に建造された11隻のみがより高度な機能を備えている。「ウォーク・アンド・レイ」方式により、ケーブル敷設船がケーブルを海中に敷設する速度と、船が移動する速度を一致させ、ケーブルが損傷しないようにすることが求められる。また、強風による船舶位置への影響を避けるため、船舶の位置を常に調整し、ケーブルを決められた位置に正確に敷設するようにするDP (自動船位保持) システムが必要になる。中国でDPシステムを備えたケーブル敷設船は、今のところ4隻しかない。もうひとつの課題は、中国のケーブル敷設船のほとんどが非自航式バージであることだ。すなわち、動力システムがなく、停泊と移動に3~4隻のアンカーボートとタグボートを必要とするため、作業時間がかかり、建設費と人件費が大きくかさむ。自航能力を有する中国籍船は2隻しか存在せず、さらに、中国のケーブル敷設船は比較的小規模で、ケーブル容量が3,500トンを超えるものは8隻しか存在しない。これでは、ケーブル容量が5,000トン以上が望ましい遠洋かつ大規模なプロジェクトに対応するのは難しい。 
 
現在、中国が所有するケーブル敷設船は、近海プロジェクトにのみ対応でき、長距離作業能力を有していないことは明らかである。世界的には、イタリア企業が所有するケーブル敷設船 "Leonardo da Vinci"が、DP3、ROV (遠隔操作型無人探査機) 、6基のディーゼルエンジン、2基のバッテリーシステムを搭載し、17,000トンの能力を持つ世界最大のケーブル敷設船である。中国で最新鋭のものは、動力システム、DP2、ROVを備えた「ZHONG CHUAN HAIGONG 6 中船海工6」があるが、その能力は1,500トンに過ぎない。イタリアのケーブル敷設船と比べると、大いに改善の余地があると言えよう。
 
図6. 中国のケーブル敷設船 (左) とイタリアのケーブル敷設船"Leonardo da Vinci" (右) 
 
O&M船 (CTV、SOV) 
洋上風力発電プロジェクトのライフサイクルの中で、O&M (オペレーション&メンテナンス) はもうひとつの重要な側面である。O&Mは20~25年に及ぶ最も長期にわたるサービスで、O&M船はO&Mコストの最大20%を占める。(関連記事:中国の再生可能エネルギー:洋上風力発電が本格始動、その行方は?
 
図7. 洋上風力発電プロジェクトのライフサイクル
 
図8. 洋上風力発電のOPEX内訳
 
ROV.O&Mプロセスでは、主に作業員輸送船 (CTV) と保守作業支援船 (SOV) が使用される。現在、中国における洋上風力発電プロジェクトの大半は、海岸に近い潮間帯 (18.5km以下) にあるため、輸送船や漁船から転用された船舶で基本的にニーズを満たすことができている。中国のプロジェクトが遠洋に進出するにつれ、このような輸送船や漁船が不足し始めることが予期され、近海プロジェクト用のCTVと遠洋プロジェクト用のSOVは、大きな需要を持つことが期待される。プロジェクトが遠洋に進めば進むほど、CTVでは往復できなくなるため、特にSOVの重要は大きくなると思われる。CTVを使用すると、往復に6~8時間かかるので、時間効率が悪くなる。そこで、時間と燃料費を節約するために、宿泊施設を備えたSOVの稼働率が高くなる。SOVに付加機能を持たせれば、ROVによる水中点検などのメンテナンス作業も行うことができる。
 
図9. O&M船の比較
 
CTVにおいては、技術的な障壁は低い。そのため、中国のプロジェクトオーナーは、追加輸送コストの低い、中国国内、または近隣諸国でCTVを建造することを好む。一方、SOVには高い技術的障壁が残っている。SOVの設計や、クレーン、ギャングウェイ、電力制御システムなどの主要コンポーネントの供給においては、欧州企業がはるかに進んでおり、現在の中国市場では、設計と主要コンポーネントの供給は、UlsteinSMSTKenzfigeeAmpelmannなどの欧州企業によって独占されている。中国企業では、ZPMC (振華重工) だけが3Dギャングウェイを自社開発している状況であり、中国企業は、現在、3Dクレーンにおいては、自主開発していない。つまり、海外プレイヤーは、設計者または主要部品サプライヤーとしてSOV市場に参入することができる。
 
図10. 中国におけるSOVバリューチェーン
 
概算では、中国は2023年に約300隻のO&M船を必要とするが、現在稼働しているのは170隻にとどまり、その多くが輸送船か漁船で、CTVは55隻、SOVは1隻しかない。2025年以前は、中国が近海プロジェクトを中心に推進するため、CTVがより優先的な選択肢となるだろう。しかし、2030年以降、遠洋 (55km以上) 洋上風力発電プロジェクトに移行する見込みであり、その時点でSOVの供給リスクが生じることが予想される。
 
図11. 中国におけるO&M船需要の推計
 
期待されるビジネスチャンス
 
船舶活用デジタル・プラットフォーム
前述したように、船舶不足により船舶賃貸料が大幅に引き上げられ、設置コストを圧迫している。プロジェクト・デベロッパーは、賃貸料の削減や沖合へのアクセス確保を目的に、自社で船舶を購入し始めている。建設船では、Longyuan (龍源) CTG (三峡新能源) などのディベロッパーが、吊り上げ能力2,000トンのWTIVを自社で所有している。また、O&M船では、Shanghai ElectricなどのOEMが2022年にUlstein設計、ZPMC建造のSOVを1隻発注していることも注目に値する。しかしながら、洋上風力発電施設用船舶には多額の初期投資が必要で、1億人民元を超えることも少なくない。こうした高価な船舶を最大限に活用するためには、船舶稼働率のアップを図るデジタル・プラットフォームの活用がカギとなる。
 
船舶稼働率を向上させるためには、デジタル・プラットフォームから2つの機能、すなわち、Window of Opportunities (機会の窓)の予測と船舶管理が不可欠である。沖合での厳しい環境 (台風、雷雨、潮の満ち引き、濃霧など) は、船舶スケジューリングや新造船竣工を困難にする。中国の沿岸域における「Window of Opportunities」は、1年間で平均100~150日程度で、陸上風力発電よりも約50%少ない。また、特定の海域や季節の変化によっても、その日数は変動する。この限られた時間枠をいかに最大限に活用するかが、コスト削減には欠かせない。悪天候による直前のリスケジュールは非常に費用がかかる。よって、出航可能時間を予測する必要がある。これ以外にも、デジタル・プラットフォームは、予知保全をもとに船舶の派遣や航路の計画を立てることもできる。AIと履歴データをもとに、デジタル・プラットフォームがタービンの潜在的な故障を予測する。この故障アラームをWindow of Opportunitiesの予測、発電量予測、予備部品の在庫状況などの機能と組み合わせることで、例えば、CTVかSOVのいずれを使用するか、あるいは両方を併用するかなどの船舶戦略、何隻の船舶を派遣するかや、船舶運航ルートの最適化を図る為のタービンメンテナンスの順序 (船舶航路) の策定などを導き出すことができる。
 
図12. デジタル・プラットフォーム概要
 
現在、中国では、スマート・デジタル・プラットフォームは主に陸上風力発電で利用されており、洋上風力発電向けのデジタル・プラットフォームは限られている。主要供給プレイヤーは、GoldwindMingyangのようなOEMや、Haidian (海電運維) のような船舶会社である。一般的に、OEMはタービンに関する専門知識や無償メンテナンス期間中に収集した膨大なデータなどの強みがある。そのため、デジタル・プラットフォームの開発において優位に立つことができよう。
 
グリーン・メタノール燃料船
 
直近の課題とはなっていないが、将来的には環境に配慮したグリーン海運物流が入札の決定的な基準になることが予想される。カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギー開発業者は遅かれ早かれ、建設とO&Mの海上輸送における二酸化炭素排出削減に取り組むことになる。現在、中国は海運業を炭素市場に含めていない。海運業は中国の運輸セクターにおける二酸化炭素総排出量の約12.6%を占めているだけに、将来的にはEUのように全国炭素排出権取制度 (ETS) に組み込まれる可能性がある。その際には、高い炭素価格を抑える目的でグリーン燃料が広く普及するだろう。(関連記事:【中国における排出権取引制度:どのようなビジネスチャンスが考えられるのか】また、English PodcastのEpisode 1: China's Carbon Market Quick Updates
 
現在中国では、ディーゼルまたはディーゼルとバッテリーのハイブリッド・エンジンが洋上風力発電船に一般的に搭載されており、大量の排気ガスを排出しながら運航している。グリーンメタノールを燃料として使用すれば、硫黄酸化物 (SOx) 排出量を最大99%、窒素酸化物 (NOx) 排出量を最大60%、二酸化炭素 (CO2) 排出量を最大60〜95%削減することができる。電気推進船はまだグリーン電力を使用していないため、完全電気推進船に比べ、メタノール燃料船はライフサイクルの炭素排出量が少ない。
 
図13. 船舶の脱炭素化手法
 
中国は現時点でメタノールを燃料とするO&M船を持っていない。中国のメタノール燃料船のその大半はコンテナ船である。主要プレイヤーの筆頭に挙げられるのがCOSCO Shipping (中遠海運) であり、同社は2023年7月までに12隻のグリーンメタノール・コンテナ船を発注している。だが、メタノールの生産コストが高いことと、中国の港湾にメタノール貯蔵施設がないことが最大のボトルネックとなっている。
 
一方で、世界を見てみると、世界最大手の洋上風力発電事業者であるØrsted (デンマーク) は、2026年頃に英国東海岸のプロジェクトで使用する目的で、世界初のメタノール燃料SOVを購入した。
 
図14. Ørstedが所有するメタノール燃料SOV
 
まとめ
洋上風力発電の主な課題は、依然としてサプライチェーン全体のコスト削減である。船舶は洋上風力発電の建設とメンテナンス作業へのアクセスを確保する上で非常に重要であるため、船舶の不足はタービンの建設とO&Mプロセスに大幅な遅延を引き起こすことが懸念される。建設プロセスでは、中国のタービンが、現在の5~6MWから将来的には8~10MWに大型化するため、吊り上げ能力1,200トン以上のWTIVも短期的には供給リスクを抱えることが予想される。限られた船資源の有効活用には、デジタル・プラットフォームがビジネスチャンスになり得る。AIと天気予報システムにより、Windows of Opportunities (機会の窓)を予測し、配船戦略と運航ルートを最適化することで、船舶の稼働率を高めることができる。
 
出典:
[1] AJOT, 2023-5, Offshore wind installation vessels – a coming shortage
[2] 北极星风力发电网,2023-1,深度 | 是什么让海上机组容量一年增长7MW?
[3] 北京国际风能大会暨展览会组委会,2021-10,风电回顾与展望2021
[4] 国际能源网,2022-4,缺口60艘!风电安装船每月租金1000万-1800万! 还在涨!
[5] 美章,2022-12,海上风电安装潮下对铺缆船的市场需求范文
[6] 上海市国有资产监督管理委员会,2023-9,亚洲首制海上风电SOV运维母船下水,上海电气创新海上风电运维方案
[7] BCG, 2022-3, Offshore Wind: Future of logistics
[8] European Commission, EU Emissions Trading System (EU ETS)
[9] 每日风电,2020,明阳智能贺小兵:海上风电运维平价技术创新之路.
 
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