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  Date: Dec 25, 2023
*こちらの記事は、2023年10月20日の弊社英文ブログ【The CCUS Hub: An Essential Business Model to Reach Carbon Neutralityを翻訳したものになります。
【CCUS Hub:カーボンニュートラル実現に向けた重要なスキーム】
 
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[まとめ]
1. 中国におけるCCUS実証プロジェクトが増加している。現在は、その多くが石油会社によるものであり、垂直統合型のCCUS方式でオペレーターの役割を一手に担っている。
 
2. 実証段階においては、排出事業者はCCUSの開発に協力することで、CCUS事業者から報酬を得ることさえできる。しかし、将来的には、排出権取引制度の発展により、排出事業者はCO2の回収・輸送・貯留を含むすべてのサービスに対して対価を支払うことになるだろう。
 
3. CCUS Hubは、貯留施設を共有することで、回収されたCO2あたりの建設コストを下げ、小規模な排出事業者も容易にCCUSに参加できるようにする。将来的には、CCUS事業者がノウハウを提供する以外に、カーボンクレジットの検証サービスを提供することも考えられる。
 
4. クレジット発行者となる排出事業者は、カーボンクレジットを抱き合わせ(バンドル)した製品を販売することで (カーボンクレジット・インセット) 、自社製品を「グリーン製品」として主張し、買手からプレミアムを得ることができる。
 
キーワード: #CCUS #カーボンクレジット #CO2回収 #CO2貯留 #CCUS Hub #カーボンレジストリ #VCU #グリーン製品 

 

この記事の内容にご関心のある方は、当社のレポート【中国におけるCCUS】とブログ記事【中国におけるCCUS:二酸化炭素の有効利用・貯留の潜在的可能性】もご参照ください。
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中国におけるCCUSの現状
 
図1. 中国におけるCCUS応用の可能性
 
二酸化炭素の回収・有効利用・貯留 (Carbon dioxide Capture, Utilization or Storage、以下CCUS) は、幅広い産業分野で応用できる重要な脱炭素化手法である。2060年までに、中国におけるCCUSの導入ポテンシャルは、カーボンニュートラル実現に向け、年間14億トンに達すると予想されている。
 
中国CCUS年次報告書2023によると、中国にはCCUS関連の実証プロジェクトが98件 (推定) あり、その半数以上が稼動している。加えて、中国のCCUS実証プロジェクトの規模は拡大しつつある。10万トン以上のプロジェクトが40件以上、50万トン以上のプロジェクトが10件以上あり、100万トン以上のプロジェクトも数件が建設されている。さらに大規模な (100万トン以上) CCUSフルサイクル・プロジェクトが増えつつあり、今後の主流になると考えられる。
 
図2. 中国におけるCCUSの実証プロジェクト
 
様々なCO2利用技術の開発が活発化している中で、地理的利用 (主に原油増進回収 (EOR)) と化学的利用 (主に尿素製造) がリードしている。その他の化学的利用、無機化、生物学的利用は、研究開発段階と実証段階を経て、商業化の段階に移行しつつあり、中国におけるCCUSバリューチェーン全体の発展の勢いを表している。深部塩水帯水層でのCO2貯留技術(EWR)は、その潜在貯留量が驚くほど大きい (1,600~2兆4,200億トン) ため、主要なCO2消費方法のひとつになるだろう。(関連レポート:当社のレポート【中国におけるCCUS】)
 
CCUS分野に注目している潜在的な投資家やプロジェクト開発者は、中国で、この市場に参入する絶好の機会を得ることができるかもしれない。以下では、中国におけるCCUSビジネスの方向性をより深く理解できるよう、CCUS Hubを含む、中国における現行のビジエネモデル、および将来性のあるビジネスモデルについて詳しく説明する。
 
現行のビジネスモデルと将来のビジネスモデル:
 
一般的に、炭素価格が低く、低炭素製品に対する需要が芽生えた初期段階では、CCUSのビジネスモデルは政府の支援を必要する。市場が成熟し、商業化が進むにつれ、政府は徐々に援助を弱め、私営企業が徐々に参入してくると想定できる。
 
他の国と同様、中国でもEORが現在最も経済的なCO2利用方法であるため、石油会社が実証段階のプロジェクトの大半を担い、油田にCO2貯留とEORを行うことで石油事業を持続可能なものにしようとしている。一方、中国の石油会社はほとんどが国営企業で、政府の支援を受けながらカーボンニュートラルの実現に向けてCCUSを実施する重積を担っているとも言える。
 
図3. プロジェクト所有者の概略
 
実証段階では、石油会社は利益を主目的としているわけではない。しかし、将来的には、石油会社は排出事業者からCO2の回収・輸送・貯留に関わるサービス料を多額に請求できるようになる可能性が高い。
 
図4. CCUSビジネスモデルの概要
 
電力業界や鉄鋼業界など、他の業界の企業もCCUSの実証プロジェクトを実施している。こうした実証プロジェクトの中で、主なビジネスモデルは、3つにまとめられる:垂直統合型CCUS方式CCUSオペレーター方式 1CCUSオペレーター方式 2である。
 
実証プロジェクトとして、CCUSバリューチェーンの大部分は、垂直統合型CCUS方式に従い、1つのグループ企業または事業体が担っている。CCUSオペレーター方式 1 を皮切りに、バリューチェーンは細分化され、様々な市場参加者に割り当てられる。CCUSオペレーター方式 2 になると、さらに細分化される。将来的には、バリューチェーンは完全に細分化され、あらゆる種類の市場参加者がCCUS Hub方式のような完全なCCUSエコシステムを形成するだろう。
 
意外なことに、現在の実証段階では、排出事業者は回収事業者から代金 (CO2買い取り料) を得ることさえできる。これは、排出事業者のCO2回収サービスのアウトソーシングに対する依存性を高め、排出削減方法の自社開発を控えることさえありえよう。炭素価格の上昇や規制の強化に伴い、排出事業者は今後、規制値を超える排出量の支払いを回避する目的で、CO2の回収・輸送・貯留サービスに対価を支払うことが予想される。(排出権取引の関連記事:【中国における排出権取引制度:どのようなビジネスチャンスが考えられるのか】
 
  • 垂直統合型CCUS方式
図5. 垂直統合型CCUS方式
 
 
垂直統合型CCUS方式は、部門間の収益とリスク管理におけるビジネスフローを円滑にし、その結果、取引コストが削減され、CCUS発展の初期段階においても、順調に導入できる。中国では現在、EORプロジェクトを通じてSINOPEC、CNPC、CNOOCなどの大手石油会社が、バリューチェーン全体を運営するCCUSビジネスモデルが主流となっている。
 
ここでの排出事業者は通常、石油会社の子会社である。排出事業者は、CCUS事業者から報酬 (CO2販売料) を得ることもある。事業者の収益は、回収された石油と、CO2貯留に対する政府からの補助金によって生み出される。これまでに中国のCCUSプロジェクトにおける資金繰りは、企業資金と高い割合の補助金によって達成されている。今後の発展を後押しする為には、政府のインセンティブと、炭素市場や投資などのより包括的な市場スキームが必要である。
 
事業例:斉魯石化(SINOPEC Qilu)-勝利油田CCUSプロジェクト
 
 
図6. 斉魯石化-勝利油田CCUSプロジェクト
 
このプロジェクトは、SINOPECの子会社であるQilu Petrochemical (斉魯石化) が山東省に年産100万トンの液体CO2回収装置を新設した中国初の100万トンクラスのCCUSプロジェクトである。同プロジェクトは2022年8月に操業を開始した。排出事業者である斉魯石化は、勝利油田から約110km離れた場所に位置している。回収されたCO2は、トラックまたは新設のパイプラインでEOR用に送られる。回収量は年間30万トンに達している。
 
  • CCUSオペレーター方式 1
図7. CCUSオペレーター方式 1
 
CCUSオペレーター方式 1 では、個々の独立した排出事業者からCO2回収を実施するため、垂直統合型CCUS方式ほど高度には統合されていない。事業者は通常、EORのような地理的利用、PPCやメタノールのような高付加価値の最終製品を産出する化学的利用、CaCO3のような鉱物利用など、CO2有効利用の面で強みを持っている。彼らは、CO2の有効利用に関するノウハウから、徐々にCO2の回収・輸送の能力を高めていっている。
 
事業例:中科金龍泰州CO2 PPCポリオール・プロジェクト
図8. 中科金龍CO2 PPCポリオール・プロジェクト
 
PPC化学製品製造に特化した私営企業であるZhongke Jinlong (中科金龍) は、江蘇省のアルコール工場、製鉄所、発電所からまずCO2を回収する。次に、回収されたCO2を自社工場に輸送し、化学的利用を実施する。PPC 1トンにつき0.2~0.4トンのCO2が生産工程で消費される。年間5万トンのPPCポリオールと、1万トンの生分解性プラスチックマスターバッチ650万平方メートルの難燃性パネルなどPPC由来の最終製品を生産・販売している。こうした高付加価値の最終製品からの収益に加え、将来的にはCO2回収サービスからも収益を得ることができるだろう。
 
  • CCUSオペレーター方式 2
図9. CCUSオペレーター方式 2
 
前述したように、現在のEORプロジェクトは国営石油大手によって大半を占められているが、低コストの化学吸収技術、CO2回収設備、超臨界CO2パイプライン、腐食防止剤などの先進技術を提供することで私営企業や外国企業が市場に参入することは十分に可能であると考えられる。そして、より部分的で、CCUS事業者が主にCO2回収と、時にはCO2輸送サービスに重点を置くCCUSオペレーター方式 2が現れる。CO2回収に関するノウハウを有する事業者は、精製・処理したCO2を大手石油会社や一部の化学・鉱物・生物学的CO2利用業者に販売する機会に恵まれる。Dunhuaのような、CO2回収に精通した事業者の中には、輸送能力まで開発しているところもある。
 
事業例:カラマイDunhua Green Carbon Technology-新疆油田EORプロジェクト
図10. Dunhua-CNPC CCUSプロジェクトのエコシステム
 
新疆に位置するDunhua Green Carbon Technology (敦華緑炭技術) は、CO2回収に注力したCCUSフルサイクル技術とサービスを提供することで、石油会社とともにEORプロジェクトに参入した私営企業の好例である。同社は、低濃度CO2回収 (自社開発アミン溶剤)、CO2輸送 (超臨界CO2輸送パイプライン)、EOR注入技術、CO2リサイクル技術など、バリューチェーン全体をカバーするCCUS技術を確立している。
 
新彊油田EORプロジェクトでは、DunhuaはCNPCカラメイのメタノール工場から年間10万トンの液体CO2を回収し、中国石油新疆油田が運営するジュンガル盆地のEOR用にトラックで輸送している。2021年末までに、Dunhuaは1,500回以上のEOR注入を実施し、累積注入量は約50万トンに達した。
 
  • CCUSハブ方式
図11. CCUSハブ方式
 
CCUSハブ方式では、バリューチェーン全体を通じて各市場参加者が様々な役割を担う将来のビジネスモデルである。この方式は、政府による介入の有無にかかわらず、大企業や合弁企業によって建設される共有のCO2貯留施設をコアとし、それを活用していく。排出事業者は、各サービス・プロバイダーが提供する回収サービス、輸送サービス、貯留サービスの対価を支払わなければならない。
 
地球温暖化対策として、国際的に取り組間れる可能性を持つ。例えば、韓国の事業会社6社はマレーシアの石油会社Petronasと協力し、CO2をマレーシアの油田に国際輸送している。
 
セメント工場、肥料工場、発電所、製油所など、各排出事業者からのCO2排出量を集約することで実現するスケーラビリティにより、CCUS Hubの確立は、パイプラインなどCO2回収量あたりの施設建設コストを抑え、CCUSのさらなる商業化につながる。また、小規模な排出事業者が設備投資コストを抑えながらCCUSに取り込むこともできる。各排出事業者は、CO2の回収、精製、収集地点への輸送を目的とした設備を工場内に整備する役割を担っている。
 

現在中国では、CNPCやCNOOCといった大手石油会社がCCUS Hubの建設を進めている。例えば、CNPCは2030年までに国内にCCUS Hubを3~5カ所建設する計画を立てている。CNOOCは、広東省恵州市で1,000万トンクラスのCCS Hubプロジェクトを立ち上げた。CNPCが中原盆地に建設を進めている中国初のCCUS Hubのように、CCUS Hubの多くは、排出源に近い産業クラスターを中心に建設される。

 

次期事業例:CNOOC広東CCUS Hub構想
 
図12. 中国におけるCO2貯留の可能性と排出状況
 
CNOOCは、広東省恵州市で1,000万トンクラスのCCS Hub・プロジェクトを立ち上げ、陸上で回収されたCO2を珠江河口流域に輸送・貯留することを計画している。この地域周辺では、大量のCO2が排出されている (2022年広東省:6.698x108トン) にもかかわらず、内陸部のCO2貯留資源が不足している。南シナ海北部最大の堆積盆地である珠江河口流域は、CCSに最も大きな潜在力を秘めている。南シナ海海洋学研究所が最近発表した報告書によると、この流域の深部塩水層は、最大1,368億トンのCO2を貯留できることが明らかになった。このCCUS Hub構想は、大亜湾地域、さらには中国全土における大規模なCO2削減に向けた有効なソリューションを提供するものである。
 
このCNOOCのイニシアチブは、ShellおよびExxonMobilの共同研究協定によって推進されており、両社と地元広東省当局は、大亜湾地域における世界規模のCCSプロジェクトの可能性を評価する。CNOOCがより野心的な計画として掲げているのは、広東省以外に、中国北部の渤海湾、東シナ海周辺の長江デルタ地域、海南省にある同社の生産拠点を中心に、さらに3カ所のCCS Hubを建設するというものだ。将来的には、CNOOCはCO2の貯留や輸送などのサービスを提供することで収益を得ることが可能になると考えられる
 
CCUS × カーボンクレジット
図13. CCUSによるカーボンクレジット (VCU) インセット
 
将来のCCUS Hub方式では、炭素市場が炭素価格の上昇とともに重要な役割を果たすことになる。CCUSは高品質のクレジットを市場に供給することができる。植林とは異なり、CCUS施設は、どの程度のCO2が回収・貯留されたかを正確に測定できる。
 
排出事業者は、主なカーボンクレジット発行者となり得る。排出事業者は、CO2の回収・輸送・貯留サービスの対価を負担する。排出削減量 (CO2) がレジストリ (CCER、VCSなど) によって検証された後、排出事業者はそれに応じたカーボンクレジットを得ることができる。そして、排出事業者はクレジットを抱き合わせ(バンドル)した製品を販売し (カーボンクレジット・インセット)、その製品を「グリーン製品」と主張して買手からプレミアムを得ることができる。(カーボンクレジット・インセットの関連記事:【中国における排出権取引制度:どのようなビジネスチャンスが考えられるのか】【水素クレジットの可能性を探る:中国企業による水素エネルギーエリアにおける炭素クレジット先行事例】
 
排出事業者がカーボンクレジットと製品をそれぞれ販売することを選択した時点で、その製品は炭素会計上「グリーン」とみなされるべきではない。そうでなければ、クレジットの償却者と現物製品の購入者との間で排出削減量のダブルカウントが生じることになるからだ。
 
CO2回収業者やCCUS貯留業者は、回収量や貯留量をレジストリのプラットフォームに報告することで、追加収益を得ることができるだろう。これは排出事業者にとって付加価値のあるサービスとなりえる。
 
引き続き、中国のCCUSにおける情報のアップデートに注力していきたい。
 
References:
[1] 天风证券,2021,什么是碳中和背景下的 CCUS?
[2]  Northern Lights official website.
[3] Business Models for Carbon Capture, Utilization and Storage Technologies in the Steel Sector: A Qualitative Multi-Method Study
[4] 跨界投资人:CCUS商业模式:来自百年石油工业史的智慧
[5] THE CCUS HUB: A playbook for regulators, industrial emitters, and hub developers 2023 
[6] CCUS Business Models and Incentives | ICSC Webinars
[7] Shell official website
[8] VCS website
[9] Verra website: Methodology framewerk for CCS
[10] 生态环境部:《温室气体自愿减排交易管理办法(试行)》
[11] CNOOC explores offshore carbon capture schemes in southern China, 2022-11
[12] 中国二氧化碳捕集利用与封存 (CCUS) 年度报告 (2023)

[13] 敦华绿碳: 助力实现“双碳”目标 , 2022-8

 
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